あと少し、もう少し [日本の現代文学]
「あと少し、もう少し」 瀬尾まいこ (新潮文庫)
寄せ集めの中学生6人が、駅伝で県大会を目指す姿を描いた、青春小説の傑作です。
2012年刊行の陸上小説。私はこの作品こそが、瀬尾の代表作だと思っています。
市野中学校は小規模校ながら、毎年中学駅伝で県大会に出場している強豪校です。
ところが、名顧問の満田先生が転勤して、素人の女子教員上原が顧問となりました。
陸上部で長距離を走れるのは、桝井と設楽(したら)と俊(しゅん)の3人です。
中学駅伝は、18キロを3キロずつ6人でタスキをつなぐので、あと3人必要です。
部長の桝井(ますい)は苦労して人を集め、ようやくメンバー6人を揃えました。
実に個性的な6人が、それぞれの思いを抱きながら、同じ目標に向かって走ります。
1区は設楽です。桝井に次ぐ実力を持っていますが、以前はいじめられっ子でした。
ところが不良の大田から意外なことを聞きます。設楽は大田にどう思われていたか?
2区は大田です。勉強を放棄し、髪を染めてタバコを吸う、乱暴な不良少年です。
大田が荒れたのはなぜか? また、今駅伝で心を燃え立たせているのはなぜか?
3区はジローです。生徒会書記で、バスケ部部長。明るく誰とでも仲良くなれます。
唯一苦手なのが、4区を走る渡部です。しかし、その渡辺にどう思われていたか?
4区は渡部です。吹奏楽部で走るのは速いけど、理屈っぽいので敬遠されています。
渡部が、周囲と距離をおいているのはなぜか? 必死で守ろうとしているのは何か?
5区は唯一の2年生の俊介です。敬愛する桝井から走りを学んで、今が伸び盛りです。
しかし、切ない秘密を持っていました。それは何か? それに気づいた人はいるか?
6区は桝井です。陸上部の部長として、誰よりもチームのために尽くしてきました。
ところがスランプが続いています。桝井に何があったのか? それに気づいた人は?
6人は時にぶつかりますが、「走りたい」という気持ちのもとでまとまっていきます。
その姿がさわやかで美しく、感動的なので、私は何度も涙が出そうになりました。
さて、走るのは6人ですが、チームにはもうひとりとても大切なメンバーがいます。
それが監督の上原です。上原の章はありませんが、彼女は陰の主人公だと思います。
もちろん主人公は桝井でしょう。その桝井を大きく成長させたのが素人の上原です。
名監督の満田のもとでは学べなかったことを、桝井は上原のもとで学んでいます。
桝井にとって、何のアドバイスもできない上原は、イライラさせられる存在でした。
ストップウォッチも扱えず、大会ではおろおろし、威厳のかけらもない監督・・・
「だけど、大田はこっそりタバコをやめている。今の設楽の走る理由は、きっと義務
感だけじゃない。あれだけかたくなだった渡部がメンバーになった。ジローはいつだ
って変わらず楽しそうで、俊介は二年で唯一のメンバーなのに変な気負いはない。そ
こは上原がいたからだというのもある。」(P322)
桝井はそのように回想していますが、おそらく自分でも分かっているはずです。
苦労はしたけど、上原のおかげで一番多く学び成長したのは、自分自身であると。
「走れなくてもいい。私が、ううん、私たちが望んでいるのはそんなことじゃないか
ら。でも、6区を走るのは桝井君だよ」(P355)・・・上原だからこそ言えた言葉です。
陸上や走ることが好きな人はもちろん、すべての中高生に読んでほしい作品です。
読後、たっぷりと余韻に浸っているうちに、自分も走りたくなってきます。
ところで、タイトルの「あと少し、もう少し」は、あと少しがんばるという意味のほか、
あと少しもう少しこのメンバーで走りたい、という意味を持っています。
さいごに。(豚バラばかり)
先日、家族で「さとしゃぶ」を食べました。奮発して「国産牛コース」にしました。
しかし、私は豚バラが好きなので、豚バラばかり食べました、ああ、もったいなかった!
寄せ集めの中学生6人が、駅伝で県大会を目指す姿を描いた、青春小説の傑作です。
2012年刊行の陸上小説。私はこの作品こそが、瀬尾の代表作だと思っています。
市野中学校は小規模校ながら、毎年中学駅伝で県大会に出場している強豪校です。
ところが、名顧問の満田先生が転勤して、素人の女子教員上原が顧問となりました。
陸上部で長距離を走れるのは、桝井と設楽(したら)と俊(しゅん)の3人です。
中学駅伝は、18キロを3キロずつ6人でタスキをつなぐので、あと3人必要です。
部長の桝井(ますい)は苦労して人を集め、ようやくメンバー6人を揃えました。
実に個性的な6人が、それぞれの思いを抱きながら、同じ目標に向かって走ります。
1区は設楽です。桝井に次ぐ実力を持っていますが、以前はいじめられっ子でした。
ところが不良の大田から意外なことを聞きます。設楽は大田にどう思われていたか?
2区は大田です。勉強を放棄し、髪を染めてタバコを吸う、乱暴な不良少年です。
大田が荒れたのはなぜか? また、今駅伝で心を燃え立たせているのはなぜか?
3区はジローです。生徒会書記で、バスケ部部長。明るく誰とでも仲良くなれます。
唯一苦手なのが、4区を走る渡部です。しかし、その渡辺にどう思われていたか?
4区は渡部です。吹奏楽部で走るのは速いけど、理屈っぽいので敬遠されています。
渡部が、周囲と距離をおいているのはなぜか? 必死で守ろうとしているのは何か?
5区は唯一の2年生の俊介です。敬愛する桝井から走りを学んで、今が伸び盛りです。
しかし、切ない秘密を持っていました。それは何か? それに気づいた人はいるか?
6区は桝井です。陸上部の部長として、誰よりもチームのために尽くしてきました。
ところがスランプが続いています。桝井に何があったのか? それに気づいた人は?
6人は時にぶつかりますが、「走りたい」という気持ちのもとでまとまっていきます。
その姿がさわやかで美しく、感動的なので、私は何度も涙が出そうになりました。
さて、走るのは6人ですが、チームにはもうひとりとても大切なメンバーがいます。
それが監督の上原です。上原の章はありませんが、彼女は陰の主人公だと思います。
もちろん主人公は桝井でしょう。その桝井を大きく成長させたのが素人の上原です。
名監督の満田のもとでは学べなかったことを、桝井は上原のもとで学んでいます。
桝井にとって、何のアドバイスもできない上原は、イライラさせられる存在でした。
ストップウォッチも扱えず、大会ではおろおろし、威厳のかけらもない監督・・・
「だけど、大田はこっそりタバコをやめている。今の設楽の走る理由は、きっと義務
感だけじゃない。あれだけかたくなだった渡部がメンバーになった。ジローはいつだ
って変わらず楽しそうで、俊介は二年で唯一のメンバーなのに変な気負いはない。そ
こは上原がいたからだというのもある。」(P322)
桝井はそのように回想していますが、おそらく自分でも分かっているはずです。
苦労はしたけど、上原のおかげで一番多く学び成長したのは、自分自身であると。
「走れなくてもいい。私が、ううん、私たちが望んでいるのはそんなことじゃないか
ら。でも、6区を走るのは桝井君だよ」(P355)・・・上原だからこそ言えた言葉です。
陸上や走ることが好きな人はもちろん、すべての中高生に読んでほしい作品です。
読後、たっぷりと余韻に浸っているうちに、自分も走りたくなってきます。
ところで、タイトルの「あと少し、もう少し」は、あと少しがんばるという意味のほか、
あと少しもう少しこのメンバーで走りたい、という意味を持っています。
さいごに。(豚バラばかり)
先日、家族で「さとしゃぶ」を食べました。奮発して「国産牛コース」にしました。
しかし、私は豚バラが好きなので、豚バラばかり食べました、ああ、もったいなかった!