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獣の奏者Ⅱ王獣編 [日本の現代文学]

 「獣の奏者Ⅱ王獣編」 上橋菜穂子 (講談社文庫)


 霧の民の血を引く天涯孤独の少女エリンと、闘蛇や王獣などの獣たちとの物語です。
 2006年に「闘蛇編」「王獣編」が出て、2009年に「探求編」「完結編」が出ました。


獣の奏者 1-4 I-IV 完結セット (講談社文庫)

獣の奏者 1-4 I-IV 完結セット (講談社文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー:
  • メディア: 文庫



 あるときエリンは、傷ついた王獣リオンの鳴き声に、竪琴の音でこたえてみました。
 すると、リオンは餌を食べ始めました。初めてエリンとリオンの心が通ったのです。

 そしてこの瞬間、エリンは図らずも、運命の決定的な曲がり角を曲がったのでした。
 このことはカザルムで秘密にされました。政治で利用されることを恐れたからです。

 やがてエリンはリオンと言葉を交わし、その背に乗って飛べるようにもなりました。
 保護区で飼われている王獣では考えられないことです。ではなぜそれができたのか?

 それはエリンが、王獣規範を逸脱してエリンを育てたからであるようなのです。
 そこで疑問が浮かびます。王獣規範は、王獣と会話させないために作られたのでは?

 エリンはリオンと一緒にいるとき、霧の民の男から警告を受けました。
 そしてエリンは、「精霊鳥」のことや「操者の技」のことを知りました。

 「神々の山脈の向こう、はるかな故地で、大いなる罪を犯して死んだ我らの祖先たち
 は、自分たちの罪を激しく悔い、子孫たちに自分たちの轍を踏ませぬように、自らに
 呪いをかけた。——魂となっても、神々の安らぐ世へは行かず、(操者の技〉を使う
 者が現れたとき、それを警告する精霊鳥となるようにと。」(P131)

 「わたしたちは、二度と再び、〈操者の技〉が使われることのないよう——一族の者
 たちが過去を忘れ去って、再び〈操者の技〉を編みだすことがないように、幼いころ
 から戒律とともに、〈操者の技〉を教えこまれる。だが、きみは、己の才覚だけで、
 〈操者の技〉を編みだしてしまった」(P132)

 真王がカザルム王獣保護区に行幸した帰り、大公軍と思しき闘蛇軍に襲われました。
 エリンはリオンの背に乗って真王を助け、いやおうなく戦乱の中に巻き込まれ・・・

 というように、真王が闘蛇軍の急襲に遭う所から、物語は一気に白熱していきます。
 一方、エリンは闘蛇からあることに気付いて・・・本当にこれは大公の仕業なのか?

 汚い陰謀に取り込まれるエリン。そして、真王の護衛イアルもまた同じように・・・
 緊迫した状況で、エリンとイアルの運命が交差する場面もまた一つの見どころです。

 そして、エリンが語る霧の民の言い伝え・・・
 真王の祖先は何か? 霧の民の祖先は何か? はるか昔にいったい何があったのか?

 「人というものが、こんなふうに物事を考えて、進んでいく生き物であるのなら、そ
 のまま行ってしまえばいい。(中略)そうやって滅びるなら、滅びてしまえばいい」
 (P382)

 エリンはいかに決意し、いかに行動するか?
 そして、新真王セィミヤは、どんな選択をするか?・・・

 終盤は手に汗を握る展開です。結末もすばらしいです。いつまでも余韻が残ります。
 そして、続きを読みたいという読者が続出し、とうとう2009年に続刊が出ました。

 続く「探求編」と「完結編」は、まだ購入していません。
 しかし、いずれ読みたいと思っています。

 さいごに。(うんち君、見ーつけた)

 私の部屋の片隅に「うんち君」が隠れていました。娘が隠しておいたようです。
 見つけた人は隠してよいことになっているので、私は娘の筆入れに入れました。

 うんち君は1時間で見つかることもあれば、3か月間現れないこともあります。
 妻はうんち君を捨てようとするので、妻には見つからないよう心掛けています。

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