スティル・ライフ [日本の現代文学]
「スティル・ライフ」 池澤夏樹 (中公文庫)
染色工場でアルバイトをする「ぼく」と、不思議な雰囲気を持つ佐々井の物語です。
1988年に芥川賞を受賞しました。小説家池澤夏樹の、出発点となる名作です。
染色工場でアルバイトをしている「ぼく」は、アルバイトの佐々井と知り合いました。
佐々井は不思議な雰囲気を持つ男で、バーでは宇宙やら微粒子やらの話をしました。
二日後に佐々井はバイトをやめますが、その1か月後に電話がかかってきて・・・
佐々井が持ち掛けた仕事は何だったのか? 佐々井にはどんな過去があったのか?
「世界ときみは、日本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、
それぞれまっすぐに立っている。」(P9)
池澤夏樹は詩人です。冒頭の詩的表現が、我々を物語の世界へいっきに引き込みます。
透明感のある文章と、醒めきった雰囲気は、村上春樹の初期作品に似ていました。
この作品の大きな魅力は、佐々井という男の不思議な雰囲気でしょう。
バーで、水の入ったグラスをじっと見ながら、佐々井はこんなことを言います。
「チェレンコフ光。宇宙から降ってくる微粒子がこの水の原子核とうまく衝突すると、
光が出る。それが見えないかと思って」(P11)
こういう言葉を吐く男を、クールだと思うか、キザだと思うかは、微妙なところです。
「ぼく」はというと、佐々井の語る遠い星の爆発で出た粒子の話に引き込まれました。
このときから、「ぼく」には、佐々井に対する強烈な好奇心が、湧き起こりました。
だから、佐々井の持ち掛けた奇妙な仕事を、手助けするようになったのだと思います。
「緊張と興奮が続いた。劇場の中みたいだ。外とはまったく別の世界を約束ごとで作っ
て、みんながその実在を信じるふりをすることで、ドラマチックな興奮が得られる。で
も、厭きるんだよ、そういうのって」(P72)
この言葉は、バブル時代を演出した、当時の時代精神に対する批判となっています。
この作品が出た1987年というのは、まさにバブル期のピークでした。
さて、この本には「ヤー・チャイカ」という中編も収録されています。
娘と二人暮らしをする男と、来日10年目のロシア人との、つながりを描いています。
二人のやり取りが面白いです。あるときロシア人が、提案してきたことは・・・
そして、娘はしだいに遠ざかっていきます。まるで、無人探査機のように・・・
ところで、娘と恐竜の挿話は何なのか? この空想日記に何を象徴したのか?
タイトルもイマイチだし、「スティル・ライフ」と比べて、完成度はずっと落ちます。
私は「マシアス・ギリの失脚」の作者の出発点を知りたくて、この本を読みました。
「マシアス・ギリの失脚」を読む前、私にとって池澤は「世界文学全集」の人でした。
「世界文学全集」について→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2010-08-25
ところが、色々調べてみると、池澤夏樹の受賞歴がスゴイ。
「花を運ぶ妹」とか「ハワイイ紀行」とか、ほかにも読んでみたい作品は多いです。
さいごに。(届いた!アベノマスク)
先日、職場に「アベノマスク」が届きました。公共性が高い仕事なので。
マスクそのものよりも、その気持ちが嬉しいですね。
染色工場でアルバイトをする「ぼく」と、不思議な雰囲気を持つ佐々井の物語です。
1988年に芥川賞を受賞しました。小説家池澤夏樹の、出発点となる名作です。
染色工場でアルバイトをしている「ぼく」は、アルバイトの佐々井と知り合いました。
佐々井は不思議な雰囲気を持つ男で、バーでは宇宙やら微粒子やらの話をしました。
二日後に佐々井はバイトをやめますが、その1か月後に電話がかかってきて・・・
佐々井が持ち掛けた仕事は何だったのか? 佐々井にはどんな過去があったのか?
「世界ときみは、日本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、
それぞれまっすぐに立っている。」(P9)
池澤夏樹は詩人です。冒頭の詩的表現が、我々を物語の世界へいっきに引き込みます。
透明感のある文章と、醒めきった雰囲気は、村上春樹の初期作品に似ていました。
この作品の大きな魅力は、佐々井という男の不思議な雰囲気でしょう。
バーで、水の入ったグラスをじっと見ながら、佐々井はこんなことを言います。
「チェレンコフ光。宇宙から降ってくる微粒子がこの水の原子核とうまく衝突すると、
光が出る。それが見えないかと思って」(P11)
こういう言葉を吐く男を、クールだと思うか、キザだと思うかは、微妙なところです。
「ぼく」はというと、佐々井の語る遠い星の爆発で出た粒子の話に引き込まれました。
このときから、「ぼく」には、佐々井に対する強烈な好奇心が、湧き起こりました。
だから、佐々井の持ち掛けた奇妙な仕事を、手助けするようになったのだと思います。
「緊張と興奮が続いた。劇場の中みたいだ。外とはまったく別の世界を約束ごとで作っ
て、みんながその実在を信じるふりをすることで、ドラマチックな興奮が得られる。で
も、厭きるんだよ、そういうのって」(P72)
この言葉は、バブル時代を演出した、当時の時代精神に対する批判となっています。
この作品が出た1987年というのは、まさにバブル期のピークでした。
さて、この本には「ヤー・チャイカ」という中編も収録されています。
娘と二人暮らしをする男と、来日10年目のロシア人との、つながりを描いています。
二人のやり取りが面白いです。あるときロシア人が、提案してきたことは・・・
そして、娘はしだいに遠ざかっていきます。まるで、無人探査機のように・・・
ところで、娘と恐竜の挿話は何なのか? この空想日記に何を象徴したのか?
タイトルもイマイチだし、「スティル・ライフ」と比べて、完成度はずっと落ちます。
私は「マシアス・ギリの失脚」の作者の出発点を知りたくて、この本を読みました。
「マシアス・ギリの失脚」を読む前、私にとって池澤は「世界文学全集」の人でした。
「世界文学全集」について→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2010-08-25
ところが、色々調べてみると、池澤夏樹の受賞歴がスゴイ。
「花を運ぶ妹」とか「ハワイイ紀行」とか、ほかにも読んでみたい作品は多いです。
さいごに。(届いた!アベノマスク)
先日、職場に「アベノマスク」が届きました。公共性が高い仕事なので。
マスクそのものよりも、その気持ちが嬉しいですね。
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