ロード・ジム1 [19世紀イギリス文学]
「ロード・ジム」 ジョセフ・コンラッド作 柴田元幸訳 (河出文庫)
海難事故で自分の弱さを露呈した船員が、英雄的行動を志して悲劇に至る物語です。
1900年に出ました。コンラッドの代表作です。1965年に映画化されています。
以前は講談社文芸文庫でしか読めませんでした。しかもひどく古い訳でした。
現在は、河出文庫から柴田元幸の訳が出ています。格段に分かりやすいです。
主人公のジムは、のちに「ロード・ジム」(ジム閣下)と呼ばれるようになる男です。
牧師の息子ですが、大きな理想を持って船乗りとなり、活躍の場を求めていました。
「二年間訓練を受けた末に船乗りとなって、己の想像力がすでによく知っている世界
に入ってみると、そこには奇妙に冒険が欠けていた。」(P19)
航海中に怪我をしますが、退院後は本国へ帰らずパトナ号の一等航海士となりました。
パトナ号は化石的に古い蒸気船で、800人もの巡礼者たちを載せていました。
ある夜、船が異常事態に陥りますが、船長や船員たちは密かにボートで脱出しました。
ジムは船客と運命を共にしようと思いながら、無意識にボートに飛び降りていました。
しかしパトナ号は沈まず、フランス軍艦に助けられ、船員の行動は問題となりました。
船長らが逃げてしまったあと、ジムはひとり裁判にかけられ、屈辱を味わいました。
ジムに同情したマーロウ船長(語り手)は、ジムに知り合いの工場を紹介しました。
ジムは居場所を見つけましたが、しばらくのちに、なぜか突然去って行き・・・
以前、講談社文芸文庫で読んだときには、これを孤高の英雄の物語とみなしました。
講談社文芸文庫「ロード・ジム」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2011-03-21
しかし、今回新訳で読み直してみて、次のように思い直しました。
これは、英雄的な冒険に憧れた青年の悲劇なのではないか。しかも、やや滑稽な。
ジムを追い詰めたのは、自分は英雄的な人物だ、というジム自身の思い込みでは?
だからジムは、自分自身の犯した卑劣な行動を、決して許せなかったのでしょう。
「でもぼくは、こいつを乗り越えなくちゃいけない。何ひとつ逃れちゃいけないん
です、さもないと・・・駄目です、絶対何ひとつ逃れやしません。」(P209)
トンズラした船長らに比べて、裁判を受けたジムは、確かにとても立派でした。
だから最初、現実逃避のように遠くへ流れていくジムの姿に、違和感を覚えました。
ジムは、英雄として行動したかったので、ひとりでも裁判に立ち向かったのでは?
そして、英雄として存在したかったので、パトナ号事故の噂から逃げ回ったのでは?
ジムのそのような性向を、スタインは「ロマンチスト」と呼びました。なるほど。
確かにジムは夢や空想を追っていて、現実離れした面があるように思います。
さて現在、ちょうど半分ほどを読み終わりました。
マーロウがスタインにジムを預けるところからです。物語はここからが面白い!
「自分の命は救われたが、人生はもう終わったとーー足元の地面を失って、目の
前に見えるものも消えて、耳に聞こえる声もなくなって。すべて滅ぼされたんだ
とーー」(P157)
しかし、ここから、ロマンチスト・ジムの人生やり直し大作戦が始まります。
がんばれ、ジム。彼は、失った名誉を取り戻すことができるのだろうか。
さいごに。(パラレル・ワールド)
うちではしょっちゅうパラレルワールドが出現します。
というのも、今使っていた消しゴムが、忽然として消えてしまっていたり・・・
そういう時、私と娘は、「パラレル・ワールドに行っちゃった」と言います。
その証拠に、探すのをやめると、忽然と現れることが多いので。
海難事故で自分の弱さを露呈した船員が、英雄的行動を志して悲劇に至る物語です。
1900年に出ました。コンラッドの代表作です。1965年に映画化されています。
以前は講談社文芸文庫でしか読めませんでした。しかもひどく古い訳でした。
現在は、河出文庫から柴田元幸の訳が出ています。格段に分かりやすいです。
主人公のジムは、のちに「ロード・ジム」(ジム閣下)と呼ばれるようになる男です。
牧師の息子ですが、大きな理想を持って船乗りとなり、活躍の場を求めていました。
「二年間訓練を受けた末に船乗りとなって、己の想像力がすでによく知っている世界
に入ってみると、そこには奇妙に冒険が欠けていた。」(P19)
航海中に怪我をしますが、退院後は本国へ帰らずパトナ号の一等航海士となりました。
パトナ号は化石的に古い蒸気船で、800人もの巡礼者たちを載せていました。
ある夜、船が異常事態に陥りますが、船長や船員たちは密かにボートで脱出しました。
ジムは船客と運命を共にしようと思いながら、無意識にボートに飛び降りていました。
しかしパトナ号は沈まず、フランス軍艦に助けられ、船員の行動は問題となりました。
船長らが逃げてしまったあと、ジムはひとり裁判にかけられ、屈辱を味わいました。
ジムに同情したマーロウ船長(語り手)は、ジムに知り合いの工場を紹介しました。
ジムは居場所を見つけましたが、しばらくのちに、なぜか突然去って行き・・・
以前、講談社文芸文庫で読んだときには、これを孤高の英雄の物語とみなしました。
講談社文芸文庫「ロード・ジム」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2011-03-21
しかし、今回新訳で読み直してみて、次のように思い直しました。
これは、英雄的な冒険に憧れた青年の悲劇なのではないか。しかも、やや滑稽な。
ジムを追い詰めたのは、自分は英雄的な人物だ、というジム自身の思い込みでは?
だからジムは、自分自身の犯した卑劣な行動を、決して許せなかったのでしょう。
「でもぼくは、こいつを乗り越えなくちゃいけない。何ひとつ逃れちゃいけないん
です、さもないと・・・駄目です、絶対何ひとつ逃れやしません。」(P209)
トンズラした船長らに比べて、裁判を受けたジムは、確かにとても立派でした。
だから最初、現実逃避のように遠くへ流れていくジムの姿に、違和感を覚えました。
ジムは、英雄として行動したかったので、ひとりでも裁判に立ち向かったのでは?
そして、英雄として存在したかったので、パトナ号事故の噂から逃げ回ったのでは?
ジムのそのような性向を、スタインは「ロマンチスト」と呼びました。なるほど。
確かにジムは夢や空想を追っていて、現実離れした面があるように思います。
さて現在、ちょうど半分ほどを読み終わりました。
マーロウがスタインにジムを預けるところからです。物語はここからが面白い!
「自分の命は救われたが、人生はもう終わったとーー足元の地面を失って、目の
前に見えるものも消えて、耳に聞こえる声もなくなって。すべて滅ぼされたんだ
とーー」(P157)
しかし、ここから、ロマンチスト・ジムの人生やり直し大作戦が始まります。
がんばれ、ジム。彼は、失った名誉を取り戻すことができるのだろうか。
さいごに。(パラレル・ワールド)
うちではしょっちゅうパラレルワールドが出現します。
というのも、今使っていた消しゴムが、忽然として消えてしまっていたり・・・
そういう時、私と娘は、「パラレル・ワールドに行っちゃった」と言います。
その証拠に、探すのをやめると、忽然と現れることが多いので。
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