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パンの大神 [20世紀イギリス文学]

 「パンの大神」 アーサー・マッケン作 平井呈一訳 (創元推理文庫)


 パンの神を見た女性から生まれた美しい娘が、数々の男を破滅させる物語です。
 中編怪奇小説で、作者の代表作とされます。クトゥルフ神話に影響を与えました。


恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)

恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/05/19
  • メディア: 文庫



 「この森羅万象、これはきみ、みんな一場の夢にすぎないんだぜ。影にすぎないんだ
 ぜ。ーーつまりだな、われわれの目から真実の世界をおおい隠している、一抹の影に
 すぎんのだよ」(P18)

 脳外科医のレイモンドは、少女メリーの脳髄に手術を施し、精神を目覚めさせました。
 すると彼女は、「パンの大神」なるものを見て、ショックで痴呆状態となりました。

 月日が経ち、ちまたでは数々の上流階級の男たちが、謎の自殺を遂げていました。
 彼らはいずれも、何かとても恐ろしいものを見たショックで、死んだようなのです。

 彼らを自殺に追い込んだのは何か? 彼らはいったい何を見たのか?
 ある青年がいろいろと探っているうちに、謎の女に行きあたって・・・

 「人間は遠いむかし、ものの核心にある恐ろしい秘密の力の知識を、うまくヴェールで
 隠していたんだね。その秘密の力の前に出ると、人間の霊魂はちょうど電流に触れると
 からだじゅうまっ黒焦げになるように、まっ黒にひからびて死んだものなんだ。」(P87)

 人間には、見てはいけない世界があるのですね。
 ちなみにパンは、ギリシア神話に出て来る牧神パンのことで、女好きで有名な神です。

 「内奥の光」は、作者の分身ダイスンが登場し、探偵小説的な味付けがされています。
 医師ブラックの妻が不可解な死に方をしたので、死体検証をしてみると・・・

 「悪魔の脳髄ですよ。あれは悪魔の脳髄です。」
 いったい夫人に何があったのか? そのことにブラック医師はどう関わっているのか?

 「輝く金字塔」にもダイスンが登場し、ちょっとした推理めいたことをします。
 ただし、読み終わったあともよく分からない部分があって、私はもやもやしました。

 穴居人たちはどこから湧き出したのか? 時空を超えてやってきたのか?
 穴居人たちはそこで何の儀式をしていたのか? そしてどこへ去ったのか?

 「赤い手」もまた、ダイスン登場作品で、推理小説っぽい物語です。
 ダイスンとフィリップスが、ある夜一人の男の死体に遭遇するところから始まります。

 男は一万年前の石斧で殺されていて、近くの塀には赤い手の絵が描かれていました。
 しかもそのとき男が持っていた手紙は、暗号のような意味不明の文面で・・・

 この作品も、読み終わったあと、もやもやが残りました。
 「持主」というのは誰か? 埋葬された原始人か? それとも今を生きる穴居人か?

 「白魔(びゃくま)」は、アーサー・マッケンの怪奇短編小説を代表する作品です。
 この作品には、幼い少女と「白い人」という魔物との交流が描かれています。

 「『悪』というものは、本来は孤立したものなんだ。『悪』とは孤独の欲情であり、
 個人的な熱情だ」と、「悪」についての独特の見解が示されていて面白いです。

 「白い人」とは何だったのか? それを知っていた乳母は、いったい何者なのか?
 女精アランナとは何者なのか? 少女の身に何があったのか?

 さて、アーサー・マッケンの代表作を、長編の「夢の丘」だという人は多いです。
 しかし私は、怪奇小説であるこちらの短編集のほうを、絶対にオススメします。

 さいごに。(選挙をやり直してほしい)

 7月10日の参院選では、比例で自民党に入れてしまいました。支持政党なので。
 あの時は、自民と旧統一教会との関りが、これほど深いとは思っていませんでした。

 知っていれば、自民には入れなかった! だまされた感がハンパ無いです。 
 それなのに、しばらくは選挙がないという。ああ・・・

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