復活の日2 [日本の現代文学]
「復活の日」 小松左京 (ハルキ文庫)
未知のウィルスによって滅亡に瀕した人類と、その復活の日を描いたSF小説です。
第一部「災厄の年」と第二部「復活の日」の二部構成。前回第一部を紹介しました。
疫病の流行からわずかな期間で、人類はほとんど滅亡状態に追いやられていました。
しかし中には、最後まで矜持を持って、自分の責務を果たそうとする人もいました。
力が尽きるまで病人を救おうと、必死でがんばり続けた医師。
死の間際にありながら、ラジオ講座で自分の考えを伝え続けた学者。
死の瞬間までひたすら、ウィルスの情報を無線で発信し続けた研究者。
自国のARS(全自動報復装置)を破壊しようとした、アメリカ大統領。
しかし、その夏の終わりには、南極の1万人を除いて、人類は滅んでしまいました。
祖国を失った今、その1万人はもはやなに人でもなく、ひとつの南極人でした。
4年後、地震予知研究者の吉住は、アラスカで大規模地震が発生すると予知しました。
しかし、それは南極と無縁の話。ところが、南極政府のトップたちはおののきました。
「北米大陸は無人ではあろうが―まだ生きのこっているものがある・・・」
「なんです?」吉住は思わずのりだした。「なにが生きのこっているんです?」
「人間の憎悪だ・・・」(P367)
ARSとは何か? それが連鎖したときに、起こりうることは?
それを止めることはできるのか? では、誰が止めに行くのか?・・・
手に汗握る展開で、結末までまっしぐらに突き進んでいきます。
原作も映画も、まったく目が離せません。そしてラストは・・・
さて、私が面白いと思ったのは、この小説で描かれた「人類の性(サガ)」です。
人類はかつて棍棒を使い、銃を使い、戦車を使い、そして核さえも使用しました。
なぜそのような武器や兵器を使い、お互いに殺し合い、奪い合うのでしょうか?
それは一見すると、「生きのこること」を求める人類のサガのように思われます。
しかし、それらの武器や兵器が、やがて自分たちにも向けられることは明白です。
実際に核軍事体制は、スイッチ一つで自国も敵国も滅亡させてしまうシステムです。
つまり、人類は長い歴史を通して、自滅するためのシステムを構築してきたのです。
もしかしたら、人類のサガは「自滅すること」を求めているのではないでしょうか?
人類はあまりにも破壊してきました。
人類だけでなく、他の生物、自然、地球そのものを、あまりにも破壊してきました。
我々はどこかで、地球のためにも「人類は自滅するべきだ」と、思っているのでは?
「復活の日」を読みながら、そんなことを考えました。
「いったい、いかなる凶暴で不吉な存在が、かかる災厄を、このうるわしい星の上に
もたらしたのか?」(P20)
これは、プロローグに書かれていた言葉です。私は、言いたい!
「人類が災厄をもたらしたのだ、人類はまさに自滅したのだ」と。
さいごに。(復活の日)
ところで、今さらながらですが、1980年映画「復活の日」を見ました。
小学校のころ見たくて見れなかった映画です。ツタヤで110円でレンタルしました。
とても面白かったです。
ARSの停止がぎりぎり間に合わなかったところなど、タイミングが良すぎですが。
未知のウィルスによって滅亡に瀕した人類と、その復活の日を描いたSF小説です。
第一部「災厄の年」と第二部「復活の日」の二部構成。前回第一部を紹介しました。
疫病の流行からわずかな期間で、人類はほとんど滅亡状態に追いやられていました。
しかし中には、最後まで矜持を持って、自分の責務を果たそうとする人もいました。
力が尽きるまで病人を救おうと、必死でがんばり続けた医師。
死の間際にありながら、ラジオ講座で自分の考えを伝え続けた学者。
死の瞬間までひたすら、ウィルスの情報を無線で発信し続けた研究者。
自国のARS(全自動報復装置)を破壊しようとした、アメリカ大統領。
しかし、その夏の終わりには、南極の1万人を除いて、人類は滅んでしまいました。
祖国を失った今、その1万人はもはやなに人でもなく、ひとつの南極人でした。
4年後、地震予知研究者の吉住は、アラスカで大規模地震が発生すると予知しました。
しかし、それは南極と無縁の話。ところが、南極政府のトップたちはおののきました。
「北米大陸は無人ではあろうが―まだ生きのこっているものがある・・・」
「なんです?」吉住は思わずのりだした。「なにが生きのこっているんです?」
「人間の憎悪だ・・・」(P367)
ARSとは何か? それが連鎖したときに、起こりうることは?
それを止めることはできるのか? では、誰が止めに行くのか?・・・
手に汗握る展開で、結末までまっしぐらに突き進んでいきます。
原作も映画も、まったく目が離せません。そしてラストは・・・
さて、私が面白いと思ったのは、この小説で描かれた「人類の性(サガ)」です。
人類はかつて棍棒を使い、銃を使い、戦車を使い、そして核さえも使用しました。
なぜそのような武器や兵器を使い、お互いに殺し合い、奪い合うのでしょうか?
それは一見すると、「生きのこること」を求める人類のサガのように思われます。
しかし、それらの武器や兵器が、やがて自分たちにも向けられることは明白です。
実際に核軍事体制は、スイッチ一つで自国も敵国も滅亡させてしまうシステムです。
つまり、人類は長い歴史を通して、自滅するためのシステムを構築してきたのです。
もしかしたら、人類のサガは「自滅すること」を求めているのではないでしょうか?
人類はあまりにも破壊してきました。
人類だけでなく、他の生物、自然、地球そのものを、あまりにも破壊してきました。
我々はどこかで、地球のためにも「人類は自滅するべきだ」と、思っているのでは?
「復活の日」を読みながら、そんなことを考えました。
「いったい、いかなる凶暴で不吉な存在が、かかる災厄を、このうるわしい星の上に
もたらしたのか?」(P20)
これは、プロローグに書かれていた言葉です。私は、言いたい!
「人類が災厄をもたらしたのだ、人類はまさに自滅したのだ」と。
さいごに。(復活の日)
ところで、今さらながらですが、1980年映画「復活の日」を見ました。
小学校のころ見たくて見れなかった映画です。ツタヤで110円でレンタルしました。
とても面白かったです。
ARSの停止がぎりぎり間に合わなかったところなど、タイミングが良すぎですが。
復活の日1 [日本の現代文学]
「復活の日」 小松左京 (ハルキ文庫)
未知のウィルスによって滅亡に瀕した人類と、その復活の日を描いたSF小説です。
1980年上映の映画も名作。新型コロナ感染流行によって、ふたたび注目されました。
1969年2月。生物兵器として研究中のウィルスMM-88が、スパイの手に渡りました。
ところがスパイの飛行機はアルプス山中で墜落し、MM-88はばらまかれたのです。
同年春、世界のあちこちで疫病が発生し、大量の人々や家畜が死んでいきました。
ワクチンも抗生物質も効果がなく、人々はなすすべもなく次々倒れていきました。
人類は今、まったく新しいウィルスに襲われているのです。
MM-88は国家機密であったため、人々に知られることがなく・・・
「復活の日」は、新型コロナウィルスの登場によって、ふたたび注目されています。
私も今更ながら読み、新型ウィルス「MM-88」のアイディアに驚きました。
その原種は人工衛星が宇宙空間から採取したもので、地上では驚異的に増殖します。
ー10度で増殖し始め、ー3度で増殖率は100倍、零度では驚異的な増殖をします。
たちが悪いことに、それは核酸だけの存在で、他の宿主を隠れ蓑にしています。
だから、原因を探ろうにもなかなか見つけることができません。
しかもそれは、イギリスの研究所で秘密裏に研究されてきた、国家機密なのです。
半年後に人類はほとんど絶滅し、生き残ったのは南極大陸にいた1万人のみです。
作者小松左京は、社会の混乱する様子を、まるで見てきたように書いています。
感染の拡大、経済の混乱、医療の崩壊、緊急事態宣言、人々の混乱・・・
「医学は人命を救おうとする一方、呪わしい細菌兵器の研究にも利用されている」
(P120)このような人類の矛盾と愚かさを、作者は伝えたかったように思います。
しかし、作者がいちばん描きたかったのは、南極での人類の団結のように思います。
残されたわずか1万人の、すでに国を失った人々の団結する姿を。
「われわれは南極という共通の大陸にすむ、共通の運命にむすばれた単一の人間組
織に――いやおうなしになりつつあります。(中略)われわれは――乏しい力をよ
せあい、助けあって生きて行かねばなりません」(P277)
小松左京はSF御三家のひとりですが、今では「予言者」とも言われています。
現在、半分ほど読んだところです。後半も楽しみです。
さいごに。(日本一大きな書店)
先日の出張で、日本一大きな書店も見学しました。丸善ジュンク堂梅田店です。
ひとつのビルが丸ごと書店になっています。うちの地元にもほしい!
未知のウィルスによって滅亡に瀕した人類と、その復活の日を描いたSF小説です。
1980年上映の映画も名作。新型コロナ感染流行によって、ふたたび注目されました。
1969年2月。生物兵器として研究中のウィルスMM-88が、スパイの手に渡りました。
ところがスパイの飛行機はアルプス山中で墜落し、MM-88はばらまかれたのです。
同年春、世界のあちこちで疫病が発生し、大量の人々や家畜が死んでいきました。
ワクチンも抗生物質も効果がなく、人々はなすすべもなく次々倒れていきました。
人類は今、まったく新しいウィルスに襲われているのです。
MM-88は国家機密であったため、人々に知られることがなく・・・
「復活の日」は、新型コロナウィルスの登場によって、ふたたび注目されています。
私も今更ながら読み、新型ウィルス「MM-88」のアイディアに驚きました。
その原種は人工衛星が宇宙空間から採取したもので、地上では驚異的に増殖します。
ー10度で増殖し始め、ー3度で増殖率は100倍、零度では驚異的な増殖をします。
たちが悪いことに、それは核酸だけの存在で、他の宿主を隠れ蓑にしています。
だから、原因を探ろうにもなかなか見つけることができません。
しかもそれは、イギリスの研究所で秘密裏に研究されてきた、国家機密なのです。
半年後に人類はほとんど絶滅し、生き残ったのは南極大陸にいた1万人のみです。
作者小松左京は、社会の混乱する様子を、まるで見てきたように書いています。
感染の拡大、経済の混乱、医療の崩壊、緊急事態宣言、人々の混乱・・・
「医学は人命を救おうとする一方、呪わしい細菌兵器の研究にも利用されている」
(P120)このような人類の矛盾と愚かさを、作者は伝えたかったように思います。
しかし、作者がいちばん描きたかったのは、南極での人類の団結のように思います。
残されたわずか1万人の、すでに国を失った人々の団結する姿を。
「われわれは南極という共通の大陸にすむ、共通の運命にむすばれた単一の人間組
織に――いやおうなしになりつつあります。(中略)われわれは――乏しい力をよ
せあい、助けあって生きて行かねばなりません」(P277)
小松左京はSF御三家のひとりですが、今では「予言者」とも言われています。
現在、半分ほど読んだところです。後半も楽しみです。
さいごに。(日本一大きな書店)
先日の出張で、日本一大きな書店も見学しました。丸善ジュンク堂梅田店です。
ひとつのビルが丸ごと書店になっています。うちの地元にもほしい!
ボッコちゃん [日本の現代文学]
「ボッコちゃん」 星新一 (新潮文庫)
日本SF界の巨匠である星新一が開拓した、ショートショートの初期の傑作集です。
表題作は1958年発表の作者の代表作です。名作「おーい でてこーい」なども収録。
表題作の「ボッコちゃん」は、バーで人気の人型ロボットをめぐる物語です。
客がボッコちゃんに飲ませた酒は、容器にたまってもう一度客に出されています。
もちろん客はそんな事情を知りません。みな彼女を本物の人間だと思っています。
中には本気で恋をしてしまう男もいて、冷たいボッコちゃんを殺すことを企て・・・
「おーい でてこーい」は、40年ほど前の高校時代に国語の授業で学んだ名作です。
台風のあと、小さな社の下から深い深い穴が現れました。底はまったく見えません。
人々はそこへ、原子炉のカスや動物の死骸など、さまざまなものを投げ込みました。
こうして人類はゴミ問題を解決したかに見えましたが、あるとき天から声が・・・
「親善キッス」は、この本の中で私の一番のお気に入りです。マイ・ベスト1です。
地球からの親善大使は、人類とほとんど同じ姿のチル星人とキスをしましたが・・・
歓迎会の会場で、チル星人はいかにして酒を飲んだか?
驚くべき結末! ちょっとお下品なところが味わい深いです。
「特許の品」もまた、私のお気に入りです。マイ・ベスト2です。
宇宙人が落としていった設計図をもとに組み立てると、快楽装置が出来上がりました。
人々が、装置のもたらす快楽に夢中になっているとき、ゲレ星人がやってきて・・・
地球人はいくらの特許料を支払わなければならないのか? その装置の真の利用法は?
「愛用の時計」は味わいがあります。大切に扱ってきた時計が遅れ始めた理由は・・・
「ある研究」も味わいがありました。夫が夢中になっていた研究とは、実は・・・
「暑さ」は怖い作品です。「逮捕してくれ」と頼む男は、暑くなるとイライラし・・・
そのほか、「雄大な計画」「ゆきとどいた生活」なども良かったです。
さて、私は中学生の時に、友達に勧められて、星新一にはまりました。
短いので読みやすくて、オチについて考えるところが、読んでいて楽しかったです。
あれから四十年。当時の本は残っていません。手元の本は平成24年に「100刷改版」!
超超ロングセラーです。中高生が朝読書用の本として、選ぶことが多いのだそうです。
さいごに。(最大のイベント終わる)
先週は1週間出張でした。ここ数年で最大のイベントでした。
これで残業が少しでも減るといいのですが・・・
日本SF界の巨匠である星新一が開拓した、ショートショートの初期の傑作集です。
表題作は1958年発表の作者の代表作です。名作「おーい でてこーい」なども収録。
表題作の「ボッコちゃん」は、バーで人気の人型ロボットをめぐる物語です。
客がボッコちゃんに飲ませた酒は、容器にたまってもう一度客に出されています。
もちろん客はそんな事情を知りません。みな彼女を本物の人間だと思っています。
中には本気で恋をしてしまう男もいて、冷たいボッコちゃんを殺すことを企て・・・
「おーい でてこーい」は、40年ほど前の高校時代に国語の授業で学んだ名作です。
台風のあと、小さな社の下から深い深い穴が現れました。底はまったく見えません。
人々はそこへ、原子炉のカスや動物の死骸など、さまざまなものを投げ込みました。
こうして人類はゴミ問題を解決したかに見えましたが、あるとき天から声が・・・
「親善キッス」は、この本の中で私の一番のお気に入りです。マイ・ベスト1です。
地球からの親善大使は、人類とほとんど同じ姿のチル星人とキスをしましたが・・・
歓迎会の会場で、チル星人はいかにして酒を飲んだか?
驚くべき結末! ちょっとお下品なところが味わい深いです。
「特許の品」もまた、私のお気に入りです。マイ・ベスト2です。
宇宙人が落としていった設計図をもとに組み立てると、快楽装置が出来上がりました。
人々が、装置のもたらす快楽に夢中になっているとき、ゲレ星人がやってきて・・・
地球人はいくらの特許料を支払わなければならないのか? その装置の真の利用法は?
「愛用の時計」は味わいがあります。大切に扱ってきた時計が遅れ始めた理由は・・・
「ある研究」も味わいがありました。夫が夢中になっていた研究とは、実は・・・
「暑さ」は怖い作品です。「逮捕してくれ」と頼む男は、暑くなるとイライラし・・・
そのほか、「雄大な計画」「ゆきとどいた生活」なども良かったです。
さて、私は中学生の時に、友達に勧められて、星新一にはまりました。
短いので読みやすくて、オチについて考えるところが、読んでいて楽しかったです。
あれから四十年。当時の本は残っていません。手元の本は平成24年に「100刷改版」!
超超ロングセラーです。中高生が朝読書用の本として、選ぶことが多いのだそうです。
さいごに。(最大のイベント終わる)
先週は1週間出張でした。ここ数年で最大のイベントでした。
これで残業が少しでも減るといいのですが・・・
オシリスの眼 [20世紀イギリス文学]
「オシリスの眼」 R・オースティン・フリーマン作 渕上痩平訳 (ちくま文庫)
失踪したエジプト学者と、その遺言を巡る相続問題を解決に導く、探偵推理小説です。
ホームズ最大のライバルと言われた、ソーンダイク博士シリーズです。1911年刊行。
高名なエジプト学者のベリンガムが、あるとき忽然と姿を消してしまいました。
ベリンガムはその直前に、いとこで株式仲買人のハーストを訪ねたようなのです。
また、ベリンガムが常に身につけていたスカラベが、弟の家の庭に落ちていました。
しかし、そこでベリンガムの姿を見た者は無く、彼の行方も生死も分かりません。
2年後、ベリンガムが死んだと思われていた頃、バラバラ死体が発見されたのです。
それは失踪したベリンガムの死体か? だとしたら、誰が彼を殺したのか?
奇妙な遺言、相続争い、出てこない遺体、出てきたバラバラ死体・・・
法医学者ソーンダイクが解明した、事件の真相は?
100年以上前に出た本書は、「物の隠し方トリック」の古典的名作とされています。
確かに、あっと驚くような、意外なトリックでした! 私はうなりました。
このあと、似たようなトリックがいくつも生まれます。
しかし、本書のトリックの上を行くものがあるでしょうか?
さて、私は最初、語り手とヒロインの大英博物館での場面を、不要だと思いました。
しかし、ちゃんと結末につながっているとは! 実によく練られています。
「オシリスの眼」というタイトルも秀逸です。
作者フリーマンの代表作とされますが、非常に完成度の高い作品だと思いました。
探偵役のソーンダイクは法医学者で、鑑識技術を駆使して論理的に結論を導きます。
犯罪捜査に最新の科学技術を取り入れたところに、本シリーズの特徴があります。
私はこの作品を、書店でたまたま見つけて興味を持ちました。読んで良かったです。
オースティン・フリーマンの作品は、同じちくま文庫の「キャッツアイ」があります。
さいごに。(娘のがんばり)
テスト期間なので夜中まで勉強して、風呂に入ると、洗濯物を干し終わるのが1時。
翌日は5時半に起きて、私と一緒に朝食の準備。娘はヤング・ケアラー状態でした。
妻が入院中は、本当によくがんばったと思います。
この2週間ほどで、だいぶ成長したのではないかと思っています。
失踪したエジプト学者と、その遺言を巡る相続問題を解決に導く、探偵推理小説です。
ホームズ最大のライバルと言われた、ソーンダイク博士シリーズです。1911年刊行。
高名なエジプト学者のベリンガムが、あるとき忽然と姿を消してしまいました。
ベリンガムはその直前に、いとこで株式仲買人のハーストを訪ねたようなのです。
また、ベリンガムが常に身につけていたスカラベが、弟の家の庭に落ちていました。
しかし、そこでベリンガムの姿を見た者は無く、彼の行方も生死も分かりません。
2年後、ベリンガムが死んだと思われていた頃、バラバラ死体が発見されたのです。
それは失踪したベリンガムの死体か? だとしたら、誰が彼を殺したのか?
奇妙な遺言、相続争い、出てこない遺体、出てきたバラバラ死体・・・
法医学者ソーンダイクが解明した、事件の真相は?
100年以上前に出た本書は、「物の隠し方トリック」の古典的名作とされています。
確かに、あっと驚くような、意外なトリックでした! 私はうなりました。
このあと、似たようなトリックがいくつも生まれます。
しかし、本書のトリックの上を行くものがあるでしょうか?
さて、私は最初、語り手とヒロインの大英博物館での場面を、不要だと思いました。
しかし、ちゃんと結末につながっているとは! 実によく練られています。
「オシリスの眼」というタイトルも秀逸です。
作者フリーマンの代表作とされますが、非常に完成度の高い作品だと思いました。
探偵役のソーンダイクは法医学者で、鑑識技術を駆使して論理的に結論を導きます。
犯罪捜査に最新の科学技術を取り入れたところに、本シリーズの特徴があります。
私はこの作品を、書店でたまたま見つけて興味を持ちました。読んで良かったです。
オースティン・フリーマンの作品は、同じちくま文庫の「キャッツアイ」があります。
さいごに。(娘のがんばり)
テスト期間なので夜中まで勉強して、風呂に入ると、洗濯物を干し終わるのが1時。
翌日は5時半に起きて、私と一緒に朝食の準備。娘はヤング・ケアラー状態でした。
妻が入院中は、本当によくがんばったと思います。
この2週間ほどで、だいぶ成長したのではないかと思っています。
思考の整理学 [読書・ライフスタイル]
「思考の整理学」 外山滋比古 (ちくま文庫)
自分で考えてまとめる方法を、体験に即して紹介した、外山流知的生産の技術です。
東大生・京大生にこの10年間最も読まれた本で、現在120刷以上となっています。
グライダーは飛行機と似ているが、悲しいかな、自力で飛ぶことができません。
学校教育は、引っ張られるままについて行くグライダー人間をつくってきました。
しかし、新しい文化を創造しようとしたら、飛行機能力が必要になってきます。
自分の頭で考え、それを自分で整理する、そのための方法を著者は教えてくれます。
スクラップブック、カード、ノート、手帳、メタノート、つんどく法、睡眠、散歩。
著者自身がおこなってきたさまざまな技術を、分かりやすく紹介しています。
この中でも、何度も言及されているのが、思考を「寝させる」ことの大切さです。
私は、ここに本書の特徴があるように思いました。
アイディアが生まれたら、それをしばらく時間をかけて「寝させる」のです。
その間に、素材と酵素の化学反応が起きて発酵し、自分だけのものとなるのです。
これ、とてもよく分かります。私の場合は、頭の中に保留の棚を作ってあります。
そこに置いたものは、ロングジョッグなどをしているとき、急に発酵するのです。
バルザックも、「熟したテーマは、向こうからやってくる」と言ったそうです。
私の場合は創造的なアイディアなどではなく、単なる仕事上の解決策なのですが。
さて、本書でもっとも興味深かったのは、「ガリバー旅行記」に関する記述です。
18世紀当時、スウィフトはこれを、政治に対する厳しい風刺として書きました。
しかし時代が下るたびに、風刺の意味がどんどん分からなくなっていきました。
一般的に風刺というものは、風化が急速に進むものなのです。
やがて、「ガリバー旅行記」を風刺として読む人は、ほとんどいなくなりました。
ところが「ガリバー旅行記」は、童話として生まれ変わり、世界に広がって・・・
終盤に入ると惜しいことに、教育に対して管をまくような言葉が目立ちました。
日本の教育ではグライダー人間しか作らない、コンピュータ人間しか作らないなど。
余談ですが、以前、「講談社現代新書」のマイ・ブームがありました。
「知的生活の方法」とか、「考える技術・書く技術」とかを読み漁りました。
「知的生活の方法」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-24
「考える技術・書く技術」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
そのころ私は、外山滋比古を知りました。
中でも感銘を受けた「知的創造のヒント」は、ちくま学芸文庫に入っています。
さいごに。(妻の退院が決まったが)
網膜剥離の手術を受けて、入院中の妻は、明日の午前に退院できることになりました。
とはいえ、まだ手術後の安静期間で、常にうつむき状態で生活しなくてはなりません。
支えてあげたいのですが、明後日から、私は4日間の出張が入っています。
一方、娘はテスト期間ですが、私の分までがんばってもらわなければなりません。
なにかとたいへんですが、こうした体験を通して、成長してほしいと思っています。
少なくとも、母親の苦労というものを、身に染みて感じてほしいです。
自分で考えてまとめる方法を、体験に即して紹介した、外山流知的生産の技術です。
東大生・京大生にこの10年間最も読まれた本で、現在120刷以上となっています。
グライダーは飛行機と似ているが、悲しいかな、自力で飛ぶことができません。
学校教育は、引っ張られるままについて行くグライダー人間をつくってきました。
しかし、新しい文化を創造しようとしたら、飛行機能力が必要になってきます。
自分の頭で考え、それを自分で整理する、そのための方法を著者は教えてくれます。
スクラップブック、カード、ノート、手帳、メタノート、つんどく法、睡眠、散歩。
著者自身がおこなってきたさまざまな技術を、分かりやすく紹介しています。
この中でも、何度も言及されているのが、思考を「寝させる」ことの大切さです。
私は、ここに本書の特徴があるように思いました。
アイディアが生まれたら、それをしばらく時間をかけて「寝させる」のです。
その間に、素材と酵素の化学反応が起きて発酵し、自分だけのものとなるのです。
これ、とてもよく分かります。私の場合は、頭の中に保留の棚を作ってあります。
そこに置いたものは、ロングジョッグなどをしているとき、急に発酵するのです。
バルザックも、「熟したテーマは、向こうからやってくる」と言ったそうです。
私の場合は創造的なアイディアなどではなく、単なる仕事上の解決策なのですが。
さて、本書でもっとも興味深かったのは、「ガリバー旅行記」に関する記述です。
18世紀当時、スウィフトはこれを、政治に対する厳しい風刺として書きました。
しかし時代が下るたびに、風刺の意味がどんどん分からなくなっていきました。
一般的に風刺というものは、風化が急速に進むものなのです。
やがて、「ガリバー旅行記」を風刺として読む人は、ほとんどいなくなりました。
ところが「ガリバー旅行記」は、童話として生まれ変わり、世界に広がって・・・
終盤に入ると惜しいことに、教育に対して管をまくような言葉が目立ちました。
日本の教育ではグライダー人間しか作らない、コンピュータ人間しか作らないなど。
余談ですが、以前、「講談社現代新書」のマイ・ブームがありました。
「知的生活の方法」とか、「考える技術・書く技術」とかを読み漁りました。
「知的生活の方法」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-24
「考える技術・書く技術」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
そのころ私は、外山滋比古を知りました。
中でも感銘を受けた「知的創造のヒント」は、ちくま学芸文庫に入っています。
さいごに。(妻の退院が決まったが)
網膜剥離の手術を受けて、入院中の妻は、明日の午前に退院できることになりました。
とはいえ、まだ手術後の安静期間で、常にうつむき状態で生活しなくてはなりません。
支えてあげたいのですが、明後日から、私は4日間の出張が入っています。
一方、娘はテスト期間ですが、私の分までがんばってもらわなければなりません。
なにかとたいへんですが、こうした体験を通して、成長してほしいと思っています。
少なくとも、母親の苦労というものを、身に染みて感じてほしいです。
パタゴニア2 [20世紀イギリス文学]
「パタゴニア」 ブルース・チャトウィン作 芹沢真理子訳 (河出文庫)
最果ての地パタゴニアを旅したチャトウィンが、97章で綴った文学的紀行文です。
池澤夏樹の世界文学全集(河出書房)に収録されたあと、河出文庫に入りました。
チャトウィンは途中、南米の天才パラシオス神父を、サレジオ会大学に訪ねました。
この神父は、時々神がかりっぽくなって、天を仰いで「おお主よ」と語り始めます。
そして伝説の一角獣が、紀元前5000年か6000年にパタゴニアにいたと話すのです。
「ラゴポサダスに行けば、一角獣の絵がふたつ見られるだろう」と。
乗せてもらったトラックがパンクして、大変な目に遭いながら目的地に着きました。
そこで見た一角獣は、チャトウィンにはどうしても雄牛に見えるのでした。(笑)
ある牧場で会った男は、某教授の発掘した古代文字の碑文について熱心に話します。
「火星人がペルーに着陸して、インカ族に文明をもたらしたんだ。」(P153)と。
ある安ホテルで会った季節労働者は、ブルへリアという魔法使いについて話します。
彼らは「インブンチェ」という化け物を作り上げ・・・それは洞窟の守護者で・・・
しかし、なんと言っても面白かったのは、16世紀の帆船ディザイア号の冒険です。
流れ着いた島で、2万羽のペンギンを殴り殺し、塩漬けにして船倉に積みました。
ところが赤道まで来たとき、ペンギンの体から1インチほどの奇怪な虫が湧き・・・
虫は増殖し、人も食い殺され、船底も食い破られて・・・ペンギンの復讐なのか?
マゼランの巨人発見の物語も面白かったです。彼らは海辺で巨人に出会いました。
巨人たちは空を指さし、「おまえたちは天から降りてきたのか」と聞きました。
一方マゼランは、彼らの履いているモカシンを見て、「パタゴン!」と言いました。
「でかい足!」という意味で、「パタゴニア」という地名の由来になったそうです。
しかし実際には、マゼランが読んでいた騎士物語に出て来る怪物の名前から・・・
彼は巨人を連れ帰るため、その足首に「装飾」だと偽り、鉄の足かせをはめて・・・
さて、先月の残業時間は結局102時間に及びました。(もちろんサービス残業です)
本を読む時間がなかなか取れません。本書はあと100ページ以上残しています。
「パタゴニア」は1つの章が短いので、隙間時間に読むのに最適です。
遅々として進みませんが、案外これが本書の正しい読み方ではないかと思っています。
この本を読んでいるわずかな時間、私自身もチャトウィンの旅の供をしています。
わずかな時間に気持ちを集中するので、場面場面がとても印象に残ります。
追記。10月6日、今日ようやく読み終わりました。
終盤は、「ブロントサウルス」の皮をもたらしたチャーリーの物語が良かったです。
また、ラストでとうとうミロドン発見の洞窟に至ります。
それにしても、ここまで本当に、長かった!
さいごに。(町内の運動会に出ました)
3年ぶりの開催となりました。今回もリレーのアンカーを走りました。
ビリでもらってビリのままゴール。見せ場は無し。55歳の私にはもうキツイ。
ということで、引退宣言をしました。来年は「お若い方、お願いします」と。
終了後、お昼寝をしてしまったので、この日も本が読めませんでした。(笑)
最果ての地パタゴニアを旅したチャトウィンが、97章で綴った文学的紀行文です。
池澤夏樹の世界文学全集(河出書房)に収録されたあと、河出文庫に入りました。
チャトウィンは途中、南米の天才パラシオス神父を、サレジオ会大学に訪ねました。
この神父は、時々神がかりっぽくなって、天を仰いで「おお主よ」と語り始めます。
そして伝説の一角獣が、紀元前5000年か6000年にパタゴニアにいたと話すのです。
「ラゴポサダスに行けば、一角獣の絵がふたつ見られるだろう」と。
乗せてもらったトラックがパンクして、大変な目に遭いながら目的地に着きました。
そこで見た一角獣は、チャトウィンにはどうしても雄牛に見えるのでした。(笑)
ある牧場で会った男は、某教授の発掘した古代文字の碑文について熱心に話します。
「火星人がペルーに着陸して、インカ族に文明をもたらしたんだ。」(P153)と。
ある安ホテルで会った季節労働者は、ブルへリアという魔法使いについて話します。
彼らは「インブンチェ」という化け物を作り上げ・・・それは洞窟の守護者で・・・
しかし、なんと言っても面白かったのは、16世紀の帆船ディザイア号の冒険です。
流れ着いた島で、2万羽のペンギンを殴り殺し、塩漬けにして船倉に積みました。
ところが赤道まで来たとき、ペンギンの体から1インチほどの奇怪な虫が湧き・・・
虫は増殖し、人も食い殺され、船底も食い破られて・・・ペンギンの復讐なのか?
マゼランの巨人発見の物語も面白かったです。彼らは海辺で巨人に出会いました。
巨人たちは空を指さし、「おまえたちは天から降りてきたのか」と聞きました。
一方マゼランは、彼らの履いているモカシンを見て、「パタゴン!」と言いました。
「でかい足!」という意味で、「パタゴニア」という地名の由来になったそうです。
しかし実際には、マゼランが読んでいた騎士物語に出て来る怪物の名前から・・・
彼は巨人を連れ帰るため、その足首に「装飾」だと偽り、鉄の足かせをはめて・・・
さて、先月の残業時間は結局102時間に及びました。(もちろんサービス残業です)
本を読む時間がなかなか取れません。本書はあと100ページ以上残しています。
「パタゴニア」は1つの章が短いので、隙間時間に読むのに最適です。
遅々として進みませんが、案外これが本書の正しい読み方ではないかと思っています。
この本を読んでいるわずかな時間、私自身もチャトウィンの旅の供をしています。
わずかな時間に気持ちを集中するので、場面場面がとても印象に残ります。
追記。10月6日、今日ようやく読み終わりました。
終盤は、「ブロントサウルス」の皮をもたらしたチャーリーの物語が良かったです。
また、ラストでとうとうミロドン発見の洞窟に至ります。
それにしても、ここまで本当に、長かった!
さいごに。(町内の運動会に出ました)
3年ぶりの開催となりました。今回もリレーのアンカーを走りました。
ビリでもらってビリのままゴール。見せ場は無し。55歳の私にはもうキツイ。
ということで、引退宣言をしました。来年は「お若い方、お願いします」と。
終了後、お昼寝をしてしまったので、この日も本が読めませんでした。(笑)