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リゾート・ホテル・ジャンキー [読書・ライフスタイル]

 「リゾート・ホテル・ジャンキー 贅沢な休息」 村瀬千文 (幻冬舎文庫)


 ホテル中毒者の著者が、選りすぐりのリゾート・ホテル14軒を紹介しています。
 1998年刊。ホテル・ジャーナリスト村瀬による、小説的ホテル・エッセイです。


リゾートホテル・ジャンキー―贅沢な休息 (幻冬舎文庫)

リゾートホテル・ジャンキー―贅沢な休息 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 村瀬 千文
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2022/08/22
  • メディア: 文庫



 どのホテルもすばらしい。しかし本書の本当の魅力は、そこに登場する人間です。
 ホテルを紹介する本なのに、ここで描かれているのは、さまざまな人生なのです。

 「ホテル案内」として読むと、少し嘘くさく感じると思います。
 「ホテル文学」として読むと、実にリアリティのある作品です。

 この本は、私も妻も大好きな本です。
 読みながら、いつかこんなリゾートに行きたいと、よく話したものです。

 わが妻のお気に入りは、「イヒラニ・リゾート&スパ」のバーデンダ—です。
 良いバーには良いバーデンダ—がいると言いますが、クリスがとても魅力的です。

 「あなたは、あの時赤ワインを飲んでいたお客様ですね(中略)ほら、カリフォ
 ルニアワインのオーパス・ワンの九一年もの」(P29)
 
 3年前に村瀬が訪れたときの、ワインの種類まで正確に覚えているクリス!
 このエピソードを、「嘘っぽい」と思うか「素敵」と思うかは、微妙なところ。

 当時、鬱々としていた村瀬に、クリスが出してくれたドリンクは・・・
 ますます小説っぽい展開となりますが、実にロマンティックなのです。

 時にちょっとしたロマンスが、時に心にしみいる話が、しっとりと語られます。
 エピソードの語り口がとてもうまくて、話に引き込まれました。

 ダヴォスのスキー場でたまたま出会って、一緒にミネストローネを食べた青年。
 心を残しながらも去って行き、村瀬に本を残していった、アイルランドの青年。

 たまたま知り合った、決してしゃべらないという、別格ヴィラ滞在のお忍び客。
 ニューヨークから自家用機で、フランスまでランチを食べに来たという夫婦。

 男性を相手にする仕事をしながら、自分を取り戻すために夜の海で泳ぐ青年。
 夫の浮気を知っていながら、なんとかそれに対抗しようと決心している夫人。

 しかし最も印象的だったのは、「ザ・サン・スーシ・ホテル・クラブ・&スパ」。
 村瀬に夕陽を眺める最高の場所を教えてくれた、滞在客の名物じいさんです。

 彼は、「いいか、人間はな、みーんなどっか病気なんだ」と真顔で言いました。
 そしてマッサージ小屋へ行きますが、マッサージ師の姿は見えず、彼は・・・

 いったい老人に何があったのか? いろいろと考えさせられました。
 そういう意味で、上質な短編小説です。人間の根源的な悲哀を感じさせられます。

 ところで私の記憶が定かならば、単行本はもっと写真が多かったように思います。
 文庫化にあたって写真を減らしたのだとしたら、少しもったいなかったです。

 さて、村瀬にはほかにもホテル関係の著書が多数あります。
 姉妹編「ホテル・ジャンキー」もまた、オススメの本です。

 さいごに。(日光ステーション・ホテル・2番館)

 先日の日光の旅行で私たちが宿泊したのは、日光ステーション・ホテル・2番館。
 駅のすぐ近くで便利なのにリーズナブルです。(お盆の割り増し料金でしたが)

 外観がスタイリッシュで、カッコ良かったです。部屋はやや狭かったかな。
 朝食が、想像以上においしかったです。私的には、野菜炒めが格別でした。

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