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恐怖 [20世紀イギリス文学]

 「恐怖」 アーサー・マッケン作 平井呈一訳 (創元推理文庫)


 ある田舎町で次々と起こる殺人事件と、住民たちの恐怖について描いた物語です。
 「パンの大神」「白魔」に並ぶ、作者の代表作のひとつです。


恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)

恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/05/19
  • メディア: 文庫



 第一次世界大戦のころ、ある田舎町で、次々と不気味な殺人事件が起こりました。
 岩礁で、石切り場で、沼地で、ボートで、それぞれ様々な死に方をしていました。

 狂人のしわざか? それとも、ドイツ人スパイのしわざか? 
 恐怖に包まれた街に、ドイツ軍がすでに地下に潜んでいるという噂も流れました。

 各所に監視員が置かれました。しかし、奇妙な殺人事件は後を絶たず・・・
 人里離れた一軒家では、多くの死者を出して・・・残された手記には・・・

 「いまわれわれは恐怖時代を生きています」 しかし恐怖は、どこから来るのか?
 何者のしわざなのか、まったくわからないまま、話はじわじわと進んで行きます。

 しかも、残された手記を読んでみても、犯人が誰なのかさっぱり分からないのです。
 読んでいて私は、最後まで解決されないのではないかと、心配になりました。

 「しかしね、人間、どうにも解決できんことにぶつかったら、それはそのまま未解決
 のままでおいておけばいいのさ。謎がどうしても解けんと、人間は、なあに謎なんか
 どこにもないんだというふりをする。」(P567)

 そして、ルイス医師が最後に達した結論は・・・
 やや突飛でオカルト的な解答に、戸惑う読者もいるかと思います。

 さて、「生活の欠片」は、新婚夫婦に、オカルト的世界が忍び寄るさまを描きます。
 オカルト的世界がよく分からず、もやもやしたまま進行するところが不気味でした。

 新婚のエドワードとメアリのもとに、メアリの叔母から小切手が送られてきました。
 ふたりはその使い道をあれこれと考え、いろいろ話しながら幸せな時間を過ごします。

 ところがその叔母がメアリに、「65歳の夫が浮気をしている」と相談しに来たのです。
 叔母は、「叔父と散歩をしていると、夫を呼ぶ口笛が何度か聞こえた」と言うのです。

 口笛が聞こえた後、叔母がこっそり見てみると、叔父は少年と何か話していて・・・
 叔父が言うには、自分はフリーメーソンの幹部で、少年はその密使であり・・・

 自分の夫が浮気をしていると言う叔母、その叔母を狂っていると考えている夫婦。
 突然訪れた叔父もまた、叔母が狂っていると言いますが、どこかちぐはぐな感じです。

 結局、叔母が正しかったのか、叔父が正しかったのか、分からないまま終わります。
 このあと、この夫婦がどうなっていくのか、とても気になりました。

 ところで、この物語中のエドワードがひとりで遠出をする話は、私のお気に入りです。
 彼が語るのは、まさに「男のロマン」。妻はそれを、楽しそうに聞いてくれています!

 「ところがその朝は、そういうどこにでもあるものが、まるで自分がお伽ばなしの魔
 法の眼鏡をかけて、お伽ばなしのなかの人物にでもなったように、なにか新しい光の
 なかで、ぼくの目にあざやかに浮き出して見えてね、ぼくはその新しい光のなかをテ
 クテク歩いて行ったわけだ。」(P363)

 本筋とはあまり関係のない部分ですが、読んでいてとても楽しかったです。
 うちのおくさまに同じことを言ったら、「だから、なに?」と言われそうなので。

 さいごに。(信じられるのは生稲議員だけ)

 旧統一教会関連団体への祝電や訪問について、「知らなかった」と言う議員が多い。
 しかし、私には信じられません。そんなに「アホ」な人たちだとは思えないので。

 唯一信じられるのは、「関連団体とは知らずに訪れた」と言っている生稲議員のみ。
 そうでしょうとも、そうでしょうとも。それはありそうな話です。私は疑いませんよ。

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