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呪われた腕 [19世紀イギリス文学]

 「呪われた腕 ハーディ傑作選」 トマス・ハーディ作 河野一郎訳 (新潮文庫)


 19世紀イギリスを代表する文豪の、愛と結婚を巡る短編を8編収録しています。
 長い間絶版でしたが、村上柴田翻訳堂の1冊として、2016年に復刊されました。


呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)

呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)

  • 作者: トマス ハーディ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫



 タイトル作「呪われた腕」は、腕にできた痣をめぐる、ホラーっぽい物語です。
 物語は、農場主に新妻がやってきて、ローダが妻の座を譲る所から始まります。

 ローダはある夜、夢に現れた誰かの腕を、必死でつかんで振り払いました。
 翌日出会った新しい妻の腕には、くっきりとローダの指の跡が残っていたのです。

 彼女の腕は、日に日に醜くしなびていきますが、原因が全く分かりません。
 とうとう新しい妻は、呪われた腕をまじない師に見てもらうことにしましたが・・・

 まじない師が教えた腕を直す方法は? それを実践した結果は?
 オカルト風に展開し、悲劇的な結末がいきなりボンっとやってきて驚かされます。

 ハーディのどの作品も、ショーペンハウアーの厭世思想が大きく影響しています。
 結末はすべて破滅的で悲劇的で、やりきれない気持ちになります。

 ショーペンハウエルによると、「宇宙を支配するものは無自覚で盲目の内在意識で
 あり、これに反抗するものは自ら滅びざるを得ない」のだそうです。(あとがき)

 そのことを念頭に置くと、「妻ゆえに」も「わが子ゆえに」も「憂鬱な軽騎兵」
 も「アリシアの日記」も、「無自覚で盲目の内在意識」に反してしまった話です。

 いずれもどこかで人生の歯車が狂って、主人公たちは自滅の道を進んでいきます。
 彼らは、もっと自分の心の中の叫びを、大切にするべきだったのでしょうか。

 中でも最も痛々しいのが、「アリシアの日記」の「シャルル」です。
 恋を捨てて名誉を重んじるとか言って、しかし、あのような結末では・・・

 違う意味で興味深かったのは、「幻想を追う女」です。前半は実に面白かった!
 まだ見ぬ詩人に勝手に恋してしまったエラ。しかし詩人は決して姿を現さない。

 その詩人もエラと同じように、下宿のおかみが名乗っているのではないか?
 いつ詩人(=おかみ)の正体が明かされるのかとワクワクして読みましたが・・・

 少し拍子抜けでした。ミステリー風の前半を、もっと生かせなかったでしょうか。
 それに、最後のオチ(?)はひどすぎませんか。子供がかわいそうですよ!

 さて、ハーディの長編といえば、「テス」と「日陰者ジュード」でしょう。
 どちらもすでに、このブログで紹介しました。参考にしてください。

 「テス」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-03-13
 「日陰者ジュード」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-05-03

 さいごに。(カレーバイキング)

 先日、家族でカレーバイキングに行きました。イエローカレーがおいしかった。
 が、一番おいしかったのは、本格マンゴージュース! 3杯飲んでしまいました。

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