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蟹工船・党生活者 [日本の近代文学]

 「蟹工船・党生活者」 小林多喜二 (新潮文庫)


 「蟹工船」は、過酷な労働を強いられる船員たちの、悲惨さを描いた中編小説です。
 29歳で特高警察に虐殺された作者が残した、プロレタリア文学の傑作二篇を収録。


蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

  • 作者: 小林 多喜二
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1953/06/30
  • メディア: ペーパーバック



 「蟹工船」とは、オホーツク海で蟹を取り、その場で缶詰にしてしまう工場船です。
 多くの貧困層がうまい言葉に乗せられて乗船し、過酷な労働を強いられていました。

 特に監督の浅川がひどい。何時間も働かせる、病気の者も働かせる、働けないと殴る。
 大事なのは蟹缶の数。資本家の儲けが最優先。だから労働者は人間扱いされません。

 実に巧みなことに、資本家たちはこの虐待を、国策と結び付けて肯定していました。
 日本の行き詰った人口問題と食糧問題を解消するために、重要な使命を持っていると。

 疲れ切った船員たちの寝る場所は、空気が濁って臭いので「糞壺」と呼ばれています。
 その「糞壺」でゴロゴロしている彼らは、まるで「蛆虫」のように見えると言います。

 ところが、この「蛆虫ども」も、やがてこのシステムに疑問を持つようになり・・・
 ある労働者の死をきっかけに、彼らの一部が中心となってサボタージュを始め・・・

 労働者400人が結束しておこなったストライキは、成功したかと思われたが・・・
 国民を守るはずの帝国軍の軍艦は、いったい誰のために行動したのか?

 とてもやりきれない気持ちになると同時に、ふつふつと怒りが湧きおこりました。
 当時の資本家の不正を、これだけはっきりと暴いた作品は、ほかに無いでしょう。

 「資本家は『モルモット』より安く買える『労働者』を、乃木軍神がやったと同じ
 方法で、入り代り、立ち代り雑作なく使い捨てた。鼻紙より無雑作に!」(P69)

 確かに、こんなにはっきりと書いてしまったら、特高に狙われるのも当然でしょう。
 しかし当時、誰かがこういう作品を、書かなければいけなかったのかもしれません。

 一緒に収録されている「党生活者」は、「蟹工船」ほどの衝撃はありません。
 しかし文章がハードボイルドっぽくて、はるかに読みやすくはるかに面白いです。

 「私」は、軍事品を作る倉田工業で働きながら、党組織を作ろうとしていました。
 ところが同志が捕まり、「私」の部屋では「私服」が張り込んでいて帰れず・・・

 ストライキは失敗しますが、希望を見出すような終わり方をしています。
 しかし「私」が多喜二の分身である以上、我々はそこに悲惨な未来を見てしまう。

 「党生活者」は、多喜二自身の地下活動の体験をもとに書かれていると言います。
 その多喜二は29歳で、野蛮な殺され方をしたことを、我々は忘れてはいけません。

 さいごに。(目覚まし係クビ)

 娘がなかなか起きなかったので、敷布団を引っ張って娘をごろっと転がしました。
 その朝、娘はいじけてしまってたいへんでした。(だったら自分で起きろ)

 翌日ママさんが娘を起こしたら、すんなり起きてきました。で、私はお役御免に。
 娘は14歳。思春期の子はホント、難しいですね。

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