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神話の力1 [哲学・歴史・芸術]

 「神話の力」 J・キャンベル&B・モイヤーズ著 飛田茂雄訳 (ハヤカワ文庫)


 神話学の大家キャンベルと、ジャーナリストのモイヤーズとの、対談の記録です。
 1985年から1986年にかけてTV番組のために撮影され、のちに出版されました。


神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/06/24
  • メディア: 文庫



 「古代から伝えられた様々な神話は、人生を支え、文明を築き、数千年にわたって
 宗教を伝えてきました。神話は人間の奥深くにあるもの、人間の内なる神秘と関わ
 っています。」(TVシリーズ第2回)

 本書は、キャンベルが世界の神話について語り尽くした、実に興味深い対談集です。
 長年神話学に携わってきたからこその、含蓄ある言葉と、鋭い洞察に満ちています。

 特に、神話は森羅万象の奥深くに潜む神秘と関わる、との指摘は印象に残りました。
 神話というものに対する見方が、まったく変わりました。まさに瞠目の書です。

 「神話は世界の目を神秘に向かって開き、あらゆる物象の底にある神秘の認識へと
 人々を導きます。その認識を失った人は神話を持つことができません。」(P94)

 まだ半分ほどしか読んでいませんが、パラパラ見返すのに時間がかかりました。
 というのも、線を引いた箇所が多すぎるので。線を引いてないページなんて、無い!

 私の友は、本に付箋を貼っていったら、分厚くなってしまったと言う。そりゃそうだ。
 私が特に気に入ったフレーズは、「まえがき」だけでも、これだけあるのですから。

 「『あらゆる苦しみや悩みの隠れた原因は』とキャンベルは言った。
 『生命の有限性であり、それが人生の最も基礎的な条件なのだ。・・・』」(P22)

 「宗教や戦争から愛、死に至るまで、今日の生活の多くを儀式化し、神話化する必
 要があるんだ」(P25)

 「『人生の意味の探求が必要だということですね』と私はたずねた。
 『そうじゃない。生きているという経験を求めることだ』」(P29)

 「生命体の本質は、それが他のものを殺して食べることにある。それこそ神話が扱
 うべき偉大な神秘だ」(P30)

 「神に対してわれわれが与える名前とイメージのすべては、当然のことながら、言
 語と芸術を超越した究極的実在を暗示する仮面だ」(P32)

 さらに、この本は、単なる神話の解説ではありません。彼は時に、人生を語ります。
 しかも、とても魅力的な言葉で。この本の魅力は、この点にもあります。

 「唯一の正しい知恵は人類から遠く離れたところ、はるか遠くの大いなる孤独のなか
 に住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに到達することができる。」
 (P22 エスキモーのシャーマンの言葉)

 本編に入ってからは、すばらしい言葉が、紹介しきれないほど次々と出てきます。
 ここではひとつだけ、本を読む喜びについて語った言葉を紹介しましょう。

 「部屋に座って本を読むーーひたすら読む。然るべき人たちが書いたまともな本です
 よ。すると知性がその本と同じ高さまで運ばれ、あなたはそのあいだずっと、穏やか
 な、静かに燃える喜びを感じ続けるでしょう。こういう生命の自覚は、あなたの日常
 生活のなかで常に持てるはずです・・・」(P220)

 さて、この対談は全6回のシリーズでまとめられ、TVで放映されました。
 日本でも放送されたのですが、その動画がユーチューブで見られました。

 時間があれば、本を読む前に動画を見た方がいいです。理解しやすくなるので。
 ただし、番組は、本と違う順序で語られるため、少しだけ注意が必要ですが。

 ちなみに私がとても興味深く感じたのは、TVシリーズ第3回「古代の語り部」です。
 この中でキャンベルは、古代の狩猟の意味について、面白いことを指摘しています。

 動物と人間には絆がある、動物は人間のために、すすんで命を捧げてくれている・・・
 動物は神の使者である、狩猟は神を殺す儀式でもある・・・

 さいごに。(いつ入る?10万円)

 いろんな人が、「10万円入った」と言い始めました。
 でも、うちはまだです。郵送した書類に不備があって送り直したため。とほほ・・・

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