ブルーもしくはブルー [日本の現代文学]
「ブルーもしくはブルー」 山本文緖 (角川文庫)
自分とまったく違う生活をしている自分の分身と、1ヶ月だけ入れ替わる物語です。
1992年刊行。初期の頃のファンタジー&ホラー作品で、NHKドラマになりました。
佐々木蒼子は、偶然訪れた福岡の街で、かつて恋人だった河見を見かけました。
追いかけると、河見が自分とそっくりな女性と一緒だったので、興味を持ちました。
彼女の名前は、河見蒼子。佐々木蒼子と、名前も生年月日も、記憶も同じなのです。
河見蒼子(蒼子B)は、佐々木蒼子(蒼子A)の分身なのではないでしょうか。
いわゆるドッペルゲンガーです。では、蒼子はいつ自分から分離したのでしょう?
それは以前、佐々木と河見のどちらと結婚するか、死ぬほど悩んだときではないか。
のちに、けんか別れしていた父と再会したとき、父には蒼子Bが見えませんでした。
どうやら蒼子Aが本体であり、蒼子Bが影のようです。蒼子Bは落ち込みました。
ところで、蒼子Aは6年前に佐々木と結婚し、東京でぜいたくに暮らしています。
しかし現在、佐々木には恋人がいて、蒼子Aは満たされない毎日を過ごしています。
蒼子Bは、河見と結婚して、福岡で質素に暮らしながらも、河見に愛されています。
しかし、河見は酔っぱらうと乱暴になり、蒼子Bはたびたび殴られているのです。
蒼子Aは、河見と結婚した蒼子Bを羨み、1か月間入れ替わることを提案しました。
蒼子Bは、河見との結婚を後悔していたので、すんなりその提案を受け入れました。
「余るほどの自由があれば心の拠り所が欲しくなり、強く愛されればそれは束縛に感
じる。」(P129)
蒼子Aと蒼子Bは、周到な準備の末、入れ替わって生活を始め・・・
蒼子Aは、まさかこの試みで窮地に追い込まれるとは、考えもせず・・・
「彼女は私のドッペルゲンガーなのだ。影が本体に勝てるわけがない。」(P178 )
蒼子Aは高をくくっていましたが・・・思いもよらぬ展開で、立場が逆転し・・・
私は最初、本体と影が力を合わせて、クズ男をやっつける物語かと思いました。
ところが、物語は意外な展開をします。これは、想定外でした。
物語は軽快で、読み始めたら止まりません。終盤のどんでん返しもすばらしい。
ただ、結末は少し寂しすぎます。ふたりとも、もっと変わってほしかったです。
タイトルは、「ブルー(蒼)もしくはブルー(蒼)」です。
「結局は同じ」というニュアンスが込められていることに、最後に気づきました。
さて、この作品は作者が一般の作品に転向してから2作目にあたります。
だから、これまで書いてきたジュニア作品っぽさが、ちらほら見え隠れします。
ちなみに、もっともジュニア作品っぽい部分は、文庫のカバーイラストでしょう。
でも、私はこのイラストが、案外好きだったりします。
これで、山本文緒の代表作をだいたい制覇しました。
「ブルーもしくはブルー」を入れて全五作、すべて面白かったです。
「自転しながら公転する」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-11
https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-14
「恋愛中毒」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-06-30
「絶対泣かない」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-05-05
「プラナリア」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-08
さいごに。(それは、誰?)
私は先日仕事の仲間に、「あなたにそっくりな人を見たよ」と言われました。
もちろん、それは私ではありません。しかし、名字も私と同じだったそうです!
近くの場所なので、確かめることはたやすいのですが、どうしてもできません。
ちょっと怖いですね。もし、私がドッペルゲンガーだったら、と思うと・・・
自分とまったく違う生活をしている自分の分身と、1ヶ月だけ入れ替わる物語です。
1992年刊行。初期の頃のファンタジー&ホラー作品で、NHKドラマになりました。
佐々木蒼子は、偶然訪れた福岡の街で、かつて恋人だった河見を見かけました。
追いかけると、河見が自分とそっくりな女性と一緒だったので、興味を持ちました。
彼女の名前は、河見蒼子。佐々木蒼子と、名前も生年月日も、記憶も同じなのです。
河見蒼子(蒼子B)は、佐々木蒼子(蒼子A)の分身なのではないでしょうか。
いわゆるドッペルゲンガーです。では、蒼子はいつ自分から分離したのでしょう?
それは以前、佐々木と河見のどちらと結婚するか、死ぬほど悩んだときではないか。
のちに、けんか別れしていた父と再会したとき、父には蒼子Bが見えませんでした。
どうやら蒼子Aが本体であり、蒼子Bが影のようです。蒼子Bは落ち込みました。
ところで、蒼子Aは6年前に佐々木と結婚し、東京でぜいたくに暮らしています。
しかし現在、佐々木には恋人がいて、蒼子Aは満たされない毎日を過ごしています。
蒼子Bは、河見と結婚して、福岡で質素に暮らしながらも、河見に愛されています。
しかし、河見は酔っぱらうと乱暴になり、蒼子Bはたびたび殴られているのです。
蒼子Aは、河見と結婚した蒼子Bを羨み、1か月間入れ替わることを提案しました。
蒼子Bは、河見との結婚を後悔していたので、すんなりその提案を受け入れました。
「余るほどの自由があれば心の拠り所が欲しくなり、強く愛されればそれは束縛に感
じる。」(P129)
蒼子Aと蒼子Bは、周到な準備の末、入れ替わって生活を始め・・・
蒼子Aは、まさかこの試みで窮地に追い込まれるとは、考えもせず・・・
「彼女は私のドッペルゲンガーなのだ。影が本体に勝てるわけがない。」(P178 )
蒼子Aは高をくくっていましたが・・・思いもよらぬ展開で、立場が逆転し・・・
私は最初、本体と影が力を合わせて、クズ男をやっつける物語かと思いました。
ところが、物語は意外な展開をします。これは、想定外でした。
物語は軽快で、読み始めたら止まりません。終盤のどんでん返しもすばらしい。
ただ、結末は少し寂しすぎます。ふたりとも、もっと変わってほしかったです。
タイトルは、「ブルー(蒼)もしくはブルー(蒼)」です。
「結局は同じ」というニュアンスが込められていることに、最後に気づきました。
さて、この作品は作者が一般の作品に転向してから2作目にあたります。
だから、これまで書いてきたジュニア作品っぽさが、ちらほら見え隠れします。
ちなみに、もっともジュニア作品っぽい部分は、文庫のカバーイラストでしょう。
でも、私はこのイラストが、案外好きだったりします。
これで、山本文緒の代表作をだいたい制覇しました。
「ブルーもしくはブルー」を入れて全五作、すべて面白かったです。
「自転しながら公転する」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-11
https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-14
「恋愛中毒」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-06-30
「絶対泣かない」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-05-05
「プラナリア」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-08
さいごに。(それは、誰?)
私は先日仕事の仲間に、「あなたにそっくりな人を見たよ」と言われました。
もちろん、それは私ではありません。しかし、名字も私と同じだったそうです!
近くの場所なので、確かめることはたやすいのですが、どうしてもできません。
ちょっと怖いですね。もし、私がドッペルゲンガーだったら、と思うと・・・