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東海道中膝栗毛2 [日本の古典文学]

 「現代語訳 東海道中膝栗毛(下)」 十返舎一九作 伊馬春部訳 (岩波現代文庫)


 江戸時代の東海道の旅を、狂歌をまぜながら面白おかしく描いた、滑稽本の傑作です。
 訳は作家の伊馬春部。1974年に出ました。下巻は五編から七編まで収録しています。


現代語訳 東海道中膝栗毛(下) (岩波現代文庫)

現代語訳 東海道中膝栗毛(下) (岩波現代文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/08/20
  • メディア: 文庫



 とうとう、目的だったお伊勢参りを済ませますが、これで終わりではありません。
 このあと、京都まで足を延ばしますが、この部分が思いのほか面白かったです。

 あとへ行くほど、1つ1つのエピソードが、長く凝ったものとなっていきます。
 十返舎一九の筆はますます冴えますが、下ネタ満載なところは上巻と変わりません。

 外宮を参拝した後、弥次さんは急に腹痛がしたので、宿屋に入って横になりました。
 勘違いして弥次さんのところにやってきた産婆。二人のやりとりが傑作でした。

 ばば「ぐっと力んで。それ、もうひとふんばり」
 弥次「ここで力んでたまるものか。雪隠(せっちん)に行きてえ。はなしてくれ」
 ばば「厠(かわや)へ行てはならんわいの。とんだことをおっしゃるわい」
 弥次「ここで力むと、ここに出る」
 ばば「出るから、りきまんせと言うのじゃ。それ、ううん。それ、もう頭がでかけた、
   出かけた」
 弥次「いたたたた。これ、そりゃあ、赤ん坊じゃねえ。それをそんなに、引っぱっちゃ
   いけねえ。ああ、これ痛えよ」
 (目の悪い産婆が、赤ん坊だと思って引っ張ったモノは、もちろん・・・)

 また、淀川を下る乗合船での一幕も傑作です。
 弥次さんが小便が出そうで困っていると、隣にいたご隠居が尿瓶を貸してくれました。

 夜の暗がりの中での手探りのため、弥次さんは急須を尿瓶だと間違えて用をたし・・・
 翌朝ご隠居はそれと知らず、その急須に酒を入れ、燗をして皆にふるまって・・・

 尿瓶は新品だったため、今度はその尿瓶に酒を入れて、燗をして皆に回しました。
 しかし途中で、酒の入った尿瓶と、病人の尿瓶が取り違えられてしまい・・・

 この手の話がわんさと出てきますが、嫌いな人もいるでしょう。私は好きですけど。
 そういえば、上巻の冒頭付近にも、こんな話が出ていました。

 ある女を手篭めにしようとしたら声を出すので、その口に餅を入れて黙らせました。
 女は餅をむしゃむしゃ食って「もっとくれ」と言うので、馬糞を入れてやったとか。

 「東海道中膝栗毛」は児童用の抄訳も出ているので、私も子供の頃に読みました。
 しかし、こういう本当に面白い(?)部分は、全部カットされていたのですね。

 この作品が出たのは1802年です。江戸時代後期の人々の好みが分かって面白いです。
 この後、一九は「続膝栗毛」を連発し、流行作家となりました。

 一九は、日本で初めて文筆のみで自活した作家です。それだけ作品が売れました。
 その背景には、寺子屋が増え、庶民の識字率が高まっていたことがあると言います。

 さいごに。(世界陸上ドーハ大会)

 世界陸上では、50キロの鈴木に次いで、20キロでは山西が金メダルを取りました。
 お見事。競歩という地味でキツイ競技が、注目されるきっかけとなってほしいです。

 そして、なんといってもスゴかったのは、4×100mリレー。米英に続き銅メダル!
 ここ10年で、日本のリレーは3以内に入って当然、というチームに成長しました。

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