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風と共に去りぬ1 [20世紀アメリカ文学]

 「風と共に去りぬ 第1巻」 M・ミッチェル作 鴻巣友季子訳 (新潮文庫)



 南北戦争時代の南部を背景に、大農園の娘スカーレットの半生を描いた長編小説です。
 刊行と同時にベストセラーとなった傑作で、大ヒットした映画も名画として有名です。


風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)

風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)

  • 作者: マーガレット ミッチェル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/28
  • メディア: 文庫



 ある日、スカーレット・オハラは、アシュリとメラニーの婚約の噂を聞きました。
 密かにアシュリ・ウィルクスに恋していたスカーレットには、寝耳に水のことでした。

 スカーレットは、ウィルクス家のバーベキューで、思い切って思いを打ち明けて・・・
 しかしスカーレットは拒絶され、アシュリが去った後、ボウルを暖炉に投げつけ・・・

 そこに偶然居合わせたのが、社交界の除け者レット・バトラー。二人の運命の出会い!
 「あなたは結婚前の娘さんにしては、まれに見る心意気の持ち主だ。」・・・

 「風と共に去りぬ」全5巻は、文庫化と同時に購入したまま長らく積ん読状態でした。
 私がなかなかこの作品に手をつけなかったのは、あまり気乗りしなかったからです。

 というのも、若い頃映画で見たこの作品は、ただただ長いだけでした。3時間42分!
 しかも、スカーレットはただのじゃじゃ馬だし、バトラーはただのおじさんだし。

 昔見た映画は、私にとってイマイチでした。しかし、原作はめちゃくちゃ面白いです。
 なんといっても、主人公のスカーレット・オハラがいい。とても生き生きしています。

 「いつまでも不自然なことばかりして、したいことは何ひとつできないなんてうんざ
 りだわ。小鳥みたいに小食のふりをして、駆けだしたいときにもしずしず歩いて、二
 日間踊り続けたってへっちゃらなのに、ワルツを踊ったぐらいで『あっ、なんだかめ
 まいが』なんて言ったりするのには、もう飽き飽きよ。わたしの半分のオツムしかな
 い男たちに、『まあ、なんてすばらしいおかた!』って言うのもげんなりだし、男た
 ちが得意になってあれこれ教えられるように、なんにも知らないふりをするのにもう
 んざり・・・」(P176)

 「100分de名著」でも言っていましたが、スカーレットは、嫌な女なのに、かわいい。
 そう思わせるところが、原作の文章のうまさでしょう。もちろん、訳もすばらしい。

 はじけるようなスカーレットにつられて、物語にどんどん引き込まれていきます。
 まるで自分もそこにいて、スカーレットの言葉を聴いているような錯覚に陥ります。

 「風と共に去りぬ」は、実に10年近い歳月を費やして執筆されたと言います。
 それだけよく文章が練られています。次のような文章も、実に味わい深いです。

 「当時、世界じゅうが綿花を求めて声をあげており、この郡の疲れ知らずで肥沃な
 新開地は潤沢に綿花を生みだした。綿花がここの鼓動する心臓であり、あたりの赭
 土(あかつち)にとって綿花を植えて刈りとるのは、心臓が膨らんでは収縮するよ
 うに自然なことだった。」(P125)

 さて、第1巻を振り返ってみると、確かにスカーレットの魅力爆発という感じです。
 しかし、私にとって最も印象的だったのは、第一部第2章の父親のエピソードです。

 身一つでやってきた父ジェラルドは、いかにしてタラを手に入れたか?
 よそ者のジェラルドが、どうして若い貴婦人のエレンと結婚できたのか?

 ジェラルドはいい味を出しています。バトラーに抗議に行った場面はサイコーです。
 ポーカーですったあげく、酔いつぶれて、仲良く歌いながら帰って来てしまう・・・

 第一巻は、17歳で未亡人になったスカーレットが、バトラーと再会する場面まで。
 未亡人になって、まだ喪が明けないというのに、バトラーと踊ることになり・・・

 「いつだって充分な勇気をーーさもなくばお金をーーもっていれば、評判とは無関
 係でやっていけますからね。」(P427)と、バトラーは言います。

 人の目を気にせず、自由奔放で、自分に正直に生きるバトラーは実にかっこいい。
 スカーレットは、知らず知らず彼に惹かれていきます。第二巻もとても楽しみです。

 さいごに。(仕事で長崎へ)

 このページが自動更新されている頃、私は出張で長崎に行っています。
 長崎は初めてです。観光する時間もあるので、少し楽しみです。

 長崎といえば、日本におけるキリスト教布教の拠点、キリシタンの象徴です。
 その街を、キリスト教徒自らが、核で破壊したところに、運命の皮肉を感じます。

 一瞬にして何万人も死んだ「ナガサキ」は、「負の聖地」です。
 平和公園と原爆資料館には、絶対に立ち寄りたいと思っています。

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