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2019年12月発売の気になる文庫本 [来月発売の気になる文庫本]

 2019年12月発売予定の文庫本で、気になるものを独断で紹介します。
 データは、出版社やamazonの、HPやメルマガを、参考にしています。

・12/5 「あらすじで読む霊界物語」 飯塚弘明ほか (文春文庫)
 → カリスマ宗教家出口王仁三郎が口述した霊界の入門書。ムー民的に気になる。

・12/23 「皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)(下)」 塩野七生 (新潮文庫)
 → イスラムと協定を結び聖地エルサレムの共同統治を実現した皇帝の伝記。買い。

・12/23 「デトロイト美術館の奇跡」 原田マハ (新潮文庫)
 → 市の財政難から存続の危機にさらされた美術館の奇跡の物語。少し気になる。


◎ 「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」

 以前、日テレの「世界一受けたい授業」で、又吉直樹によって取り上げられました。
 誰もが知っている名作文学を、漫画であっというまに読むことができます。

 収録作品は、「人間失格」「山月記」「檸檬」「舞姫」「高野聖」「羅生門」「変身」
 「たけくらべ」「三四郎」「五重塔」「野菊の墓」「恩讐の彼方へ」「浮雲」・・・

 どの作品も、物語のツボをしっかり押さえています。要約の仕方が非常にうまい。
 ただし、「10ページくらい」という縛りがあるため、短編中心になっています。

 しかし中には、「三四郎」「人間失格」「蒲団」「浮雲」など中長編小説もあります。
 特に夏目漱石の「三四郎」などは、とてもよく出来ていると思います。

 また、太宰治の「人間失格」は、主人公が漫画を描いているという設定です。
 著者自身の思いを重ねているようで面白いです。

 なお、本の絵は、ほぼ水木しげるです。「高野聖」は、まるでゲゲゲの鬼太郎ですよ。
 著者ドリヤス工場は、水木しげるのタッチを再現したパロディマンガ家だそうです。

 この作品は大きな話題となりました。この内容で、850円+税は安いと思います。
 この本はとても好評だったため、続編も2冊出ています。


有名すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

有名すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

  • 作者: ドリヤス工場
  • 出版社/メーカー: リイド社
  • 発売日: 2015/09/11
  • メディア: コミック



定番すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

定番すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

  • 作者: ドリヤス工場
  • 出版社/メーカー: リイド社
  • 発売日: 2016/07/25
  • メディア: コミック



必修すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

必修すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

  • 作者: ドリヤス工場
  • 出版社/メーカー: リイド社
  • 発売日: 2017/09/07
  • メディア: コミック




◎ 「世界文学あらすじ大辞典」

 世界文学の名作を1001選んで、物語のあらすじを収録した、全4巻の大辞典です。
 以前の職場の近くの図書館には、この事典があったので、私は愛用していました。

 セットで8万円くらいする本ですが、マイナーな事典なので、ほぼ私専用でした。
 その図書館に通った数年の間に、ほかに読んでいる人を見たことがなかったです。

 もうあの図書館には通っていません。あの大事典は、どうしているのでしょうか。
 図書館の片隅で、埋もれたままになってやしないかと、心配になります。


世界文学あらすじ大事典〈1〉あ~きょぅ

世界文学あらすじ大事典〈1〉あ~きょぅ

  • 作者: 横山 茂雄
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2005/08/01
  • メディア: 大型本



世界文学あらすじ大事典〈2〉きょぇ~ちぇ

世界文学あらすじ大事典〈2〉きょぇ~ちぇ

  • 作者: 横山 茂雄
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2005/12/01
  • メディア: 単行本



世界文学あらすじ大事典〈3〉ちか~ふろ

世界文学あらすじ大事典〈3〉ちか~ふろ

  • 作者: 横山 茂雄
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2006/09/01
  • メディア: 大型本



世界文学あらすじ大事典〈4〉

世界文学あらすじ大事典〈4〉

  • 作者: 横山 茂雄
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 大型本




◎ さいごに。(職場の面白い人?)

 私の職場には、よく面白いギャグを言う人がいます。
 しかし、家で妻と娘にそのギャグを話しても、ちっとも面白がってくれません。

 妻には、「職場で笑っているのは、あなただけかもよ」と言われました。
 全く面白くないオヤジギャグを、みんなで我慢して聞いているのではないかと。

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失われた時を求めて1 [20世紀フランス文学]

 「抄訳版 失われた時を求めてⅠ」 プルースト作 鈴木道彦編訳 (集英社文庫)


 自分の中に埋もれている「失われた時」を掘りおこし、紡ぎ直した人生の物語です。
 日本語訳にして原稿用紙1万枚の長大な小説で、20世紀文学の傑作とされています。


抄訳版 失われた時を求めて 1 (集英社文庫)

抄訳版 失われた時を求めて 1 (集英社文庫)

  • 作者: マルセル・プルースト
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/12/13
  • メディア: 文庫



 「長いあいだ、私は夜早く床に就くのだった。ときには、蝋燭を消すとたちまち目が
 ふさがり、『ああ、眠るんだな』と考える暇さえないこともあった。」(P17)

 という有名な書き出しで始まるこの小説は、夢うつつの状態でどんどん話が進みます。
 「私」がどんな人物なのかさえ分からないまま、不意にその記憶の中へ潜り込みます。

 最初に現れるのは、「私」が幼いころ過ごしたコンブレーでの生活です。
 母、父、祖父母、大叔父と大叔母、そしてスワンとその娘ジルベルト・・・

 さて、私は本を読むのが遅い方で、小説(「風と共に去りぬ」等)は時速50ページ。
 しかし、「失われた時を求めて」は咀嚼しないといけないので、時速30ページほど。

 特に最初の100ページぐらいは、語り口調に馴染めなくて、かなり手こずりました。
 現在と過去、パリとコンブレ―を行き来するうちに、私は何度か迷子になりました。

 たとえば「私」は、紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、過去を思い出します。
 たちまち「私」は、コンブレ―の日曜日の朝の、レオニ叔母の家に引き戻されます。

 「過去は知性の領域外の、知性の手の届かないところで、たとえば予想もしなかった
 品物のなかに(この品物の与える感覚のなかに)ひそんでいるのだ。」(P74)

 (このマドレーヌ体験の箇所は、無意識的記憶を呼び起こす場面として有名です。
 しかし私は、マドレーヌを紅茶に浸して食べるのかと、変な所で感心しました。)

 物語が少し見えてきたのが、コンブレ―の二つの散歩道が出てくる場面からです。
 その一本は、スワン家の方へ、もう一本は、ゲルマントの方へ向かっています。

 スワン家は、成金的なユダヤ人の家系で、その家のジルベルトに「私」は恋します。
 ゲルマント家は、中世から続く伝説の貴族で、ゲルマント侯爵夫人はその象徴です。

 散歩道の二つの方向は対称的で、物語において重要な象徴的意味を持っています。
 私はまだⅠ巻の半ばまでしか読んでいないので、詳しいことは分かりませんが。

 ところで、この物語をなんとか読み続けられているのは、「抄訳版」だからです。
 また、一章ごとにその章の内容が簡潔に書かれているので、理解しやすいです。

 なお、現在「失われた時を求めて 全一冊」という、優れた抄訳版も出ています。
 なんと1冊の単行本でまとめられています。文庫化されたら絶対に買いたいです。


失われた時を求めて 全一冊 (新潮モダン・クラシックス)

失われた時を求めて 全一冊 (新潮モダン・クラシックス)

  • 作者: マルセル プルースト
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: 単行本



 さいごに。(紅葉に癒される)

 先日見に行った紅葉は、とても情緒がありました。
 紅葉の照り映える様子を見ると、とても心が癒されてきます。

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蹴りたい背中 [日本の現代文学]

 「蹴りたい背中」 綿矢りさ (河出文庫)


 クラスに溶け込むことができない男女二人の、微妙な心の交流を描いた青春小説です。
 2003年に金原ひとみの「蛇とピアス」と共に、芥川賞を受賞して評判になりました。


蹴りたい背中 (河出文庫)

蹴りたい背中 (河出文庫)

  • 作者: 綿矢 りさ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2007/04/05
  • メディア: 文庫



 高校1年の6月の時点で、まだ友達ができていないのは、ハツとにな川だけでした。
 ハツは、皆が他人に合わせておしゃべりをし合うことに、違和感を覚えていました。

 「どうしてそんなに薄まりたがるんだろう。同じ溶液に浸かってぐったり安心して、
 他人と飽和することは、そんなに心地よいもんなんだろうか。」(P22)

 クラスでも浮いて、陸上部でも浮いて、周囲に溶け込めないハツ。
 しかしオリチャンつながりで、もう一人の余り者のにな川と、話すようになりました。

 ある日にな川は、自分の部屋でハツに構わず、オリチャンのラジオを聴き始めました。
 その無防備でもの悲しい背中を見たとき、不意に蹴飛ばしたくなる衝動が起きて・・・

 「蹴りたい背中」は、冒頭部分のヘンテコ(?)な文章に、注目が集まりました。
 「葉緑体? オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。」(P7)とか。

 この文章を、新鮮だと評価するか、意味不明だと斬って捨てるかは、微妙なところ。
 当時、評価する方向に傾いたのは、綿矢が19歳の美少女だったという要素が大きい。

 2003年、綿矢が19歳という若さで、芥川賞に輝いたのは、文学史上の大事件でした。
 あっというまに100万部以上を売って、一躍人気作家の仲間入りを果たしました。

 文庫化されてから積んどく状態で、なぜかこれまで読む機会がありませんでした。
 今回綿矢作品を読んで、少女の心の叫びを表現するのがうまいなあと思いました。

 「認めてほしい。許してほしい。櫛にからまった髪の毛を一本一本取り除くように、
 私の心にからみつく黒い筋を指でつまみ取ってごみ箱に捨ててほしい。」(P109)

 こういう表現がさらりと出てきてしまうところが、この人の才能であったのでしょう。
 また、少女の内面を、背中を蹴りたい衝動で表すところなど、ユニークだと思います。

 最近、綿矢が中学時代に「風と共に去りぬ」を繰り返し読んでいたことを知りました。
 それで、急に気になり始めました。現在35歳? どんな作品を書いているのでしょう。

 さいごに。(紅葉)

 娘が中学に入ってからは部活があって、家族で出かける機会が作りにくくなりました。
 先日、久々に家族3人で、少し遅めの紅葉を見に行きました。紅葉は癒されますね。

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羊と鋼の森 [日本の現代文学]

 「羊と鋼の森」 宮下奈都 (文春文庫)


 ピアノ調律師になりたての青年が、様々な体験を通して成長する姿を描いた物語です。
 2015年の直木賞候補になり、2016年に本屋大賞に輝きました。2018年に映画公開。


羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

  • 作者: 宮下 奈都
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/02/09
  • メディア: 文庫



 外村(とむら)青年は17歳の時、天才調律師の板鳥(いたどり)と出会いました。
 その調律に引き込まれた外村は、「弟子にしていただけませんか」と直訴しました。

 専門学校で2年間学んだあと、板鳥のいる江藤楽器で調律師として働き始めました。
 7年先輩の柳に仕事を教えてもらいながら、ピアノの世界にどっぷりと浸かります。

 「ピアノが、どこかに溶けている美しいものを取り出して耳に届く形にできる奇跡だ
 としたら、僕はよろこんでそのしもべになろう。」(P26)・・・

 この物語を書いた宮下奈都は、本当にピアノが好きな人だと思います。
 随所にピアノへの愛あふれる文章が、散りばめられています。

 「ピアノは一台ずつ顔のある個々の独立した楽器だけど、大本のところでつながって
 いる。(中略)この世界にはありとあらゆるところに音楽が溶けていて個々のピアノ
 がそれを形にする。」(P28)

 主人公の外村の、ピアノに対する純粋さとひたむきさが、とても印象に残りました。
 外村が必死に調律するときの姿勢から、大切なことを教えられたように感じました。

 外村は、目立つ才能を持っているわけではないが、何か特別なものを持っています。
 だからこそ外村は、ピアノの音の中に森を見たり、森の匂いを嗅いだりするのです。

 また、外村を取り巻く人々が良い。近くで支える柳、暖かく見守る板鳥・・・ 
 そして、なんといっても女子高生の双子ちゃん。彼らの数年後が気になります。

 さて、板鳥が「目指す音」について語る場面で、原民喜の文章を引用しています。
 この文章がなかなかいい。原民喜の作品を読んでみたくなりました。

 「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようであるながら、きびし
 く深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

 さいごに。(100均の湯たんぽ)

 寒くなりました。娘と妻は、夜には電気あんかを使っています。
 私は湯たんぽ派。5年ほど前に100均で買った湯たんぽを、今だに使っています。

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ムー民的に気になる2人の日本人 [心理・宗教・オカルト]

 「生き方は星空が教えてくれる」 木内鶴彦 (サンマーク文庫)
 「すべては宇宙の采配」 木村秋則 (東邦出版)


 木内鶴彦は、4つの彗星を発見したコメット・ハンターで、臨死体験者でもあります。
 木村秋則は、無農薬りんごの栽培に成功した農家で、超常現象の体験者でもあります。


生き方は星空が教えてくれる (サンマーク文庫)

生き方は星空が教えてくれる (サンマーク文庫)

  • 作者: 木内鶴彦
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2015/08/21
  • メディア: 文庫



すべては宇宙の采配

すべては宇宙の采配

  • 作者: 木村 秋則
  • 出版社/メーカー: 東邦出版
  • 発売日: 2013/05/24
  • メディア: 単行本



 オカルト雑誌「ムー」の愛読者を、通称「ムー民(ムーミン)」と言っています。
 私もムー民の資格ありだと思っています。TV「超ムーの世界」を毎回見ているので。

 木内鶴彦と木村秋則は、2人とも大きな実績を上げていて、世界的に有名な人物です。
 と同時に、2人とも超常現象を体験し、そのことを語っているという点で共通します。

 そういう点でこの2人は、「ムー民」たちの間でたいへん有名なのです。
 そして、それぞれ超常現象について書かれているのが、上記の二冊です。

 「生き方は星空が教えてくれる」は、彗星にかけた木内鶴彦の半生が記されています。
 22歳のとき重病で心臓が止まり、昏睡状態になったときに、臨死体験をしました。

 「今の自分は肉体をもたない、いわば意識だけの存在だ。もしかしたら意識だけの存在
 になると空間や時間の制約を受けなくなるかもしれない。もしそうならば、過去や未来
 にも行くことができるかもしれない」(P89)

 蘇生するまでのわずか30分間に、宇宙の始まりから人類の歴史までを見てきたと言う。
 宇宙はどのように誕生したか? 地球に巨大な彗星が衝突して月ができた?

 木内鶴彦は、自身の臨死体験について、さまざまなところで述べています。
 なお、立花隆の「証言・臨死体験」では、特別に二章をとって検証していました。

 「すべては宇宙の采配」は、無農薬リンゴにかけた木村秋則の半生が記されています。
 竜に遭ったり、UFOを見たり、宇宙人に拉致されたり、臨死体験をしたりしてます。

 「あれは地球のカレンダーです。」
 「地球のカレンダー? じゃあ、最後の数字の先はないのですか?」(P163)

 木村秋則は、地球の最後の年が、それほど先のことではないと言っています。
 木内鶴彦も、同じことを言っていたような気がしますが・・・

 木村秋則もまた、臨死体験をしています。
 「あの世への案内人なんです」と言った、あの女性は何者だったのか?

 さいごに。(クリスマスケーキは、誰が選ぶ?)

 そろそろクリスマスケーキを予約する時期です。
 家族3人好みが違うので、誰がケーキを選ぶか、今からバトルが始まりそうです。

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風と共に去りぬ5 [20世紀アメリカ文学]

 「風と共に去りぬ 第5巻」 M・ミッチェル作 鴻巣友季子訳 (新潮文庫)


 南北戦争時代の南部を背景に、大農園の娘スカーレットの半生を描いた長編小説です。
 出てすぐベストセラーとなり、映画も大ヒットしました。20世紀米文学の大傑作です。


風と共に去りぬ 第5巻 (新潮文庫)

風と共に去りぬ 第5巻 (新潮文庫)

  • 作者: マーガレット ミッチェル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 文庫



 フランクが亡くなり、レットは突然スカーレットに求婚し、二人は婚約しました。
 アトランタは「再建」の3年目で、ブロックが州知事となった最悪の時代でした。

 「ふたりの婚約の知らせは、想定外にして破壊力満点の爆弾発表であり、アトラン
 タの街を震撼させ、ふだんきわめて温和な婦人たちさえ反感情を激しく口にした。」
 (P73)

 ハネムーンを楽しみ、住居を新築し、やがて女の子のボニーが生まれました。
 レットはボニーを溺愛し、その将来を考え、少しずつ保守派と和解していきます。

 一方スカーレットは、アシュリのことが忘れられず、レットとの仲は冷えて・・・
 アシュリの誕生日サプライズ・パーティーの日、スカーレットは・・・

 最終巻の第5巻に入っても、面白さは一向に衰えません。
 特にこの巻の中盤からは、結末に向かってぐんぐん加速していきます。

 レットが3か月ぶりに帰った日、スカーレットに不幸な事故が起きて・・・
 ボニーの事故によって、レットとスカーレットの溝は、決定的なものとなり・・・

 そして物語は、メラニーの死を経て、結末にいっきにもつれ込みます。
 メラニーは陰のヒロインです。その死と共にこの物語も、終焉を迎えました。

 メラニーはスカーレットに何を託したか? メラニーは何を知っていたか?
 そしてスカーレットは、メラニーに何を気付かされたか?

 しかし、気付いたときには、すでに何もかも遅かったのです。
 レットの最後の告白はあまりにも哀切で、涙が出そうになりました。

 「だが、スカーレット、不死身のような愛でもすり切れることがあると、思ったこ
 とはないか?」(P492)

 読後、とても深い余韻を残します。これで終わるはずがありません!
 スカーレットはきっとまた立ち上がって・・・と想像したくなりました。

 この作品は皆から続編を期待されたものの、ミッチェルは頑なに拒んだと言います。
 そして彼女は48歳の若さで、自動車事故で急逝してしまいました。

 その後、相続人たちがリプリーに依頼して、続編「スカーレット」が世に出ました。
 1991年に刊行されると同時に大ベストセラーとなりました。


スカーレット (1) (新潮文庫)

スカーレット (1) (新潮文庫)

  • 作者: アレクサンドラ・リプリー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1994/10
  • メディア: 文庫



 「スカーレット」は大いに売れましたが、厳しい批判にもさらされたのだそうです。
 ウィキペディアにあらすじが載っているので参考にしてください。(私は未読)

 さらに2007年、マッケイグによる「レット・バトラー」が出ました。
 しかし、こちらもレビューで酷評されています。


新編・風と共に去りぬ レット・バトラー1 (ゴマ文庫)

新編・風と共に去りぬ レット・バトラー1 (ゴマ文庫)

  • 作者: ドナルド・マッケイグ
  • 出版社/メーカー: ゴマブックス
  • 発売日: 2008/06/10
  • メディア: 文庫



 結局、ミッチェルの「風と共に去りぬ」が、素晴らしすぎたのでしょう。
 続編は気になるものの、私は読む気になれません。

 さいごに(ロス)

 10月に読み始め、この1か月半ほどはずっと、「風と共に去りぬ」一色でした。
 とうとう終わってしまい、胸にぽっかり穴が開いたようです。まさにロスの状態。

 林真理子の「スカーレット」が全巻出たら、すぐに買って読みたいです。
 ああ、早く読みたい。「スカーレット」が待ちどおしい。

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世界文学の流れをざっくりとつかむ16 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第4章≫ 中世ヨーロッパ

3 中世フランス叙事詩(「ロランの歌」)

 800年にローマ教皇が、カロリング朝のカール大帝を西ローマ帝国の正式な後継者としたことにより、神聖ローマ帝国が誕生しました。この帝国は、フランス・ドイツ・イタリアを含む広範囲の帝国でした。この時から、西ヨーロッパが独自の文明世界としてまとまりました。同時にヨーロッパは、神聖ローマ帝国とローマ教会を中心とする西と、ビザンティン帝国とコンスタンティノープル教会を中心とする東に分裂しました。

 カール大帝は以前から、キリスト教に基づく統治をするために、教会を発展させようとしていました。そのために各地から人材を求め、特に古典研究に力を注ぎ、古代文化を復興しました。この時期、ギリシア・ローマ文化とキリスト教とゲルマン精神が融合し、西ヨーロッパの文化が形成され始めました。この時期の文化の隆盛を、カロリング朝ルネサンスと呼びます。

 カール大帝の没後、大帝国は四分五裂の状態となり、しだいに現在のフランス・ドイツ・イタリアが形成されていきました。10世紀の終わりには、フランスでカペー家がカロリング家から王位を継承しました。11世紀に入ると、農業技術が発展したことから人口が増加し、様々な文学が広まりました。

 音楽が教会の中に閉じ込められ、詩はラテン語でしか作られなかった11世紀に、南フランスの宮廷では、トルバドゥールと呼ばれる吟遊詩人が登場しました。彼らは、カール大帝や十字軍を題材にした武勲詩を歌いました。その代表作が「ロランの歌」です。「ロランの歌」はそれ以前から口承されていましたが、この時期に古フランス語で記されました。「ロラン」とはカール大帝の武将ロランのことで、フランク王国とイスラム帝国との戦いにおけるロランの活躍が描かれています。各地で伝えられていたカール(シャルルマーニュ)伝説も加えられています。

 フランスの武勲詩はスペインにも影響を与えました。スペインの「我がシッドの歌」は、イスラム勢力との戦いを描いた叙事詩で、1200年頃に古スペイン語で書かれました。「シッド」とは、レコンキスタの英雄エル・シッドのことです。この物語は、エル・シッドの伝承に様々な伝説が加わって大きな物語となっています。

 北フランスではトルヴェールと呼ばれる吟遊詩人が活躍し、主にアーサー王伝説を題材にした物語や宮廷愛を歌いました。イギリスから持ち込まれたアーサー王伝説は、フランスでキリスト教的な要素が盛り込まれ、壮大な物語群となりました。15世紀になって、トマス・マロリーによって、イギリスに逆輸入されました。

 次回は、ドイツにおける叙事詩について述べたいと思います。

 さいごに。(先日の女子会)

 娘は先日の女子会で、ほとんど聞き役だったそうです。話題を提供できないので。
 しかし、聞き役に徹していたからこそ、重宝されたのだそうです。

 女子は自分の話を聞いてほしいので、黙って頷いてくれる存在は貴重だと言います。
 なるほど。それならこれからも、うちの娘は女子会に呼んでもらえそうです。

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英国流おしゃれ作法 [読書・ライフスタイル]

 「英国流おしゃれ作法」 林勝太郎 (朝日文庫)


 前半は「紳士のおしゃれ作法」というエッセイで、後半は「紳士の服飾事典」です。
 林勝太郎は、服飾評論家の草分けです。含蓄のある文章です。


英国流おしゃれ作法 (朝日文庫)

英国流おしゃれ作法 (朝日文庫)

  • 作者: 林 勝太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 文庫



 手元の本は2000年12月第一刷です。32歳の私の、ファッションのバイブルでした。
 家には2冊あります。余分に買いたくなるほど素晴らしい内容ですが、現在は絶版。

 当時の御意見番であった板坂元は、断定的な述べ方が鼻につくこともありました。
 林勝太郎は、自分の体験から導き出されたことを、自然に述べている点が良いです。

 「若い時の美貌やしなやかなプロポーションは、それはそれとして美しい。だが、洗
 練された優雅な美しさというのは、歳を重ねてきた時間に相応しい振舞いによって磨
 かれ、そうした”美しく生きてきた姿”こそが真実の美しさだと思う。」(P15)

 こういう文章は、実際に歳を重ねて、自分で実感してみないと書けないと思います。
 また、自信をもって言えることを、さりげなく表現しているところも良いです。

 「おしゃれというのは服装だけの問題ではない。むしろ、精神から来る意識のありか
 たが重要である。つまり服装と精神が一体となって磨きをかけ、ある種のこだわりを
 持って、おしゃれの作法を切りひらくことが大事だ、と私は考えている。」(P52)

 前半の「紳士のおしゃれ作法」では、林のファッション哲学を知ることができます。
 ファッションで重要なのは、服装と精神の両方であることが強調されています。

 後半の「紳士の服飾事典」では、アイテムごとのエピソードが記されています。
 ここでも、そのアイテムを身に着けるにあたっての精神の重要性が説かれています。

 「紳士のセビロは、上品で上質な古典の味わいに満ちている。たいていのものは変わ
 ることを運命づけられているのだが、変わらないものの中にこそ真実の美しさ、永遠
 の美が潜んでいることがある。」(P97)

 30歳から32歳の頃は、私が最もファッションにこだわりを持っていた時期です。
 林勝太郎の「英国式こだわり生活術」や「英国四季の彩り」なども愛読書でした。

 「英国式こだわり生活術」は、英国人のこだわりの生活について述べています。
 「英国・四季の彩り」は、四季のうつろいと英国人の暮らし方について述べています。


英国式こだわり生活術 (朝日文庫)

英国式こだわり生活術 (朝日文庫)

  • 作者: 林 勝太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 文庫



英国・四季の彩り (朝日文庫)

英国・四季の彩り (朝日文庫)

  • 作者: 林 勝太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 文庫



 この3冊に「英国の流儀Ⅰ・Ⅱ」の2冊を加えた全5冊が、私の林勝太郎全集です。
 「英国の流儀Ⅰ・Ⅱ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-11-03

 さて、これらの本を読んで、好き勝手に服を買っていたのは、33歳ぐらいまでです。
 結婚してお小遣い制になってから、服にこだわることができなくなりました。(笑)

 さいごに。(女子会)

 娘は時々、部活の数人の友達と女子会をして、好きな人の話などをしています。
 しかしうちの娘の好きな人はジャニーズなので、なかなか話に入れないと言います。

 早くリア恋をして、みんなと対等に話ができるようになるといいのですけど。
 クラスに好きな人ができれば、学校に行くのがもっと楽しくなると思うのですが。

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風と共に去りぬ4 [20世紀アメリカ文学]

 「風と共に去りぬ 第4巻」 M・ミッチェル作 鴻巣友季子訳 (新潮文庫)


 南北戦争時代の南部を背景に、大農園の娘スカーレットの半生を描いた長編小説です。
 出てすぐベストセラーとなり、映画も大ヒットしました。20世紀米文学の大傑作です。


風と共に去りぬ 第4巻 (新潮文庫)

風と共に去りぬ 第4巻 (新潮文庫)

  • 作者: マーガレット ミッチェル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: 文庫



 スカーレットは、スエレンの婚約者フランク・ケネディを奪い、結婚しました。
 愛なんてありません。この略奪婚は、ただタラの追徴課税を支払うためでした。

 またスカーレットは、レットに金を出させ製材所を買い、経営に乗り出しました。
 アトランタの人々から批判されながらも、カネを稼ぐために突っ走ります。

 順調に利益をあげ始めた頃、スカーレットの体に変化が・・・
 タラでは父ジェラルドが亡くなり、妹のスエレンは・・・そしてウィルは・・・

 第4巻の前半では、途中出場のウィル・ベンティーンが印象的に描かれています。
 彼は、行き倒れの南部兵で、回復してからはタラのために尽くしていました。

 スカーレットがアトランタで奮闘している間、タラを守っていたのはウィルです。
 そのころ、タラでは何があったのか? そして、ウィルが決断したことは?

 ジェラルドの葬儀で、ウィルが取った行動は?・・・ウィルは頼りになる男です。
 また、ウィルのタラに対する思いを打ち明けた言葉は、とても心にしみました。

 「いまではここがわたしの故郷なんだ、スカーレット。生まれて初めて知った唯一
 本物のわが家だし、あの家の石一つ一つまで愛している。わが家同然に手をかけて
 きました。手塩にかけたものを、人は深く愛するようになるでしょう。」(P190)

 「あの家の石一つ一つまで愛している」という部分が良いですね。
 まさに、ウィルはタラにとって、神によるたまものでしょう。

 第4巻の後半、アシュリやメラニーらが、アトランタに帰ってきます。
 スカーレットは不注意から暴漢に襲われ、男たちは大変なことに・・・

 アシュリとフランクが、通っていた政治の集会とは何だったのか?
 アシュリは負傷しながらも帰ったが、フランクはとうとう・・・

 さて、第4巻に入っても、物語の面白さは少しも変わりません。文章もうまい。
 どのページにも、何かしら新鮮な驚きがあります。省いていいページなんて無い。

 林真理子の「私はスカーレット」は、どのような抄訳になっているのでしょうか。
 ともかく、全巻揃ったところでまとめ買いします。

 さいごに。(走高跳4位)

 市の陸上大会の走高跳に娘が出場しました。学校では1m15までしか跳べません。
 競技場は跳びやすいので、1m20を目標にしていました。

 結果は、なんと、1m30を跳んで4位! びっくりです。チームメイトもびっくり。
 何よりも、娘がやるきになってきてくれたのが、私としては嬉しいです。

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英国の流儀Ⅰ・Ⅱ [読書・ライフスタイル]

 「英国の流儀Ⅰ」「英国の流儀Ⅱ」 林勝太郎 (朝日文庫)


 英国の伝統的ファッションを中心に、男の服装のこだわりを記したエッセイです。
 林勝太郎は服飾評論家です。挿絵も著者によるものです。


英国の流儀―ブリティッシュ・スタイル (朝日文庫)

英国の流儀―ブリティッシュ・スタイル (朝日文庫)

  • 作者: 林 勝太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 文庫



英国の流儀〈2〉TRADITIONAL FASHION (朝日文庫)

英国の流儀〈2〉TRADITIONAL FASHION (朝日文庫)

  • 作者: 林 勝太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 文庫



 私が30歳でファッションに目覚めたころ、愛読していた著書の1冊です。
 当時の私にとって、ファッションにおけるご意見番は、板坂元と林勝太郎でした。

 服飾評論家林勝太郎は、伊勢丹のファッション・プロデューサーでもありました。
 この本が出たのが1984年のバブル期で、バブルがはじけた後に文庫化されました。

 バブルで大きく変わってしまった当時、人々は変わらないものを求めていました。
 そして、何十年も変わらない英国の伝統的なファッションが、見直されたのです。

 「男の服装というものは、一時的に流行に押し流されるものではなく、由緒正しい
 本格的なものを安心して長く着ることにある。つまり完成されたブリティッシュ・
 スタイルを高尚な趣味によって洗練させる。これこそが男の服装学の基本ではない
 か。」(ⅠのP210)

 「それがよいものだと信ずれば何十年、あるいは何百年のロング・スパンで子孫に
 受け継いでゆく。その驚くべき信念と勇気ある行動の中で、質の追求が行われ、長
 い歴史の中で辛抱づよく磨きをかけ、だんだんと完成に近づけていった生活様式が
 ブリティッシュ・スタイルなのである。」(ⅠのP234)

 「英国の流儀」二冊は、どこを読んでもイギリスの香りがして、味わい深いです。
 Ⅰ巻では「トレンチコート・ストーリー」が、特に面白かったです。

 また、Ⅱ巻ではワイシャツやネクタイについて言及している部分が良かったです。
 ファッションの歴史的な背景を説明してくれるので、知的好奇心が満たされました。

 Ⅱ巻の終盤「ダンディズム再考」「紳士の服装学」「トラディッショナルについて」
 などは、林勝太郎のファッションに対する考え方がよく分かって、面白かったです。

 さらに、時々ギクッとするような鋭い考察があって、読み手は気が抜けません。
 たとえば、英国式のゴルフについて、林は次のように述べています。

 「英国式ゴルフとは要するに、科学的な挑戦ではなく、自然の神秘のなかで平静に
 切り抜けていくパーセイヴィングのゴルフなのだ」・・・自然の神秘ねえ・・・

 さて、この本を読んだ当時の私は、伝統的な英国ファッションにかぶれました。
 身の丈に合わぬと知りながら、東京のギーブス&ホークスでスーツを誂えたりして。

 あの頃は独り身だったから、そんな贅沢もできました。
 今では逆立ちしたってできない。と、さまざまな感慨をもたらしてくれる本です。

 さいごに。(時計が故障)

 ゼニスのエル・プリメロを購入してから、もう20年近くたちました。
 だから、色々な部分が故障し始めたのも、仕方がないかもしれません。

 オーバーホールすると、5万~10万はかかります。(ボーナスまで待たなければ)
 良いものを持つのはいいけど、身の丈に合ったものを持つことが大事ですね。

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