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オルレアンの少女 [19世紀ドイツ北欧文学]

 「オルレアンの少女(おとめ)」 シルレル作 佐藤通次訳 (岩波文庫)


 神による啓示を受けてフランスのために戦った、ジャンヌ・ダルクの悲劇です。
 1801年に上演され大成功を収めました。チャイコフスキー作オペラも有名です。

 岩波文庫「オルレアンの少女」は、初版が1938年で、改訳が1951年です。
 活字が旧字体で読みにくいのですが、文章自体は意外と分かりやすいです。


オルレアンの少女 (1951年) (岩波文庫)

オルレアンの少女 (1951年) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/03/17
  • メディア: 文庫



 英仏100年戦争の終わり頃、フランスの地はイギリス軍に蹂躙されていました。
 オルレアンの町は包囲され、敵に攻め落とされるのを待つばかりの状況でした。

 そのとき片田舎で、農夫の末娘ジャンヌは、突然、神の声を聞いたのです。
 「さあ往け、お前は地上でわたしの為に證(あかし)せねばならぬ。」(P35)

 ただし、常に清くなければならない。つまり、男を好きになってはいけない。
 妻にも母にもなれないが、戦いの名誉で、どの女よりも尊い者にしよう、と。

 神の命に従い、ジャンヌはフランス王を戴冠させるため、行動を開始しました。
 威風堂々と現れたジャンヌは、敵軍に勝利し、フランス王にも信頼されました。

 一方、敗走するイギリス軍からは、悪魔の使者として恐れられて・・・
 敵将ライオネルと戦ったことが、皮肉にも彼女にとってアダとなり・・・

 「わたしは、天国の開かれるのを見、マリヤ様のお姿をこの目に拝みました!
 それなのに、今わたくしの望みは、この世にあって、天国にはございませぬ!」
 (P199)

 シャルル七世の戴冠が盛大に行われた時、ジャンヌの父が想定外の行動を・・・
 そして、ジャンヌの運命は急転換して・・・

 これは、ずっと読みたかった戯曲です。2020年2月にようやく復刊されました。
 古い本ですが、文章は分かりやすくて、いっきに読めました。面白かったです。

 ジャンヌのドラマティックな生涯に、ロマンティックな味付けをしています。
 少女としてのジャンヌダルクの悲劇性が際立ち、魅惑的な戯曲となっています。

 特に、結末をシラー流に美しく描いたところがいいです。史実とは違いますが。
 ジャンヌ・ダルクのイメージの多くは、この戯曲によって作られたそうです。

 シラーの作品は、ほかにも次のようなものがあります。参考にしてください。
 「群盗」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-11-21
 「ヴァレンシュタイン」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-06-18
 「ヴィルヘルム・テル」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-06-01

 さいごに。(ようやくマスクが)

 ときどきマスクが、店頭で見られるようになりました。生産が追いつき始めたのか?
 しかし手作りの布マスクは、洗って何度も使えるので、店頭のマスクはいりません。

 もしかしたら、みんなが布マスクを作り始めたので、市場に出てきたのでしょうか。
 今後マスクが余って、店が多くの在庫を抱えるのではと、余計な心配をしています。

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