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悪童日記 [20世紀その他文学]

 「悪童日記」 アゴタ・クリストフ作 堀茂樹訳 (ハヤカワepi文庫)


 第二次大戦を、ヨーロッパの田舎でたくましく生き抜いた、双子の少年の日記です。
 1986年に出て世界に衝撃を与えた、作者のデビュー作です。映画にもなりました。


悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/05/01
  • メディア: 文庫



 双子の少年たちは、大きな町から母に連れられて、祖母の家に連れてこられました。
 母から離れ、厳しい祖母の元、見知らぬ土地で、二人の新たな生活が始まりました。

 「おばあちゃんは、ぼくらをこう呼ぶ。
 『雌犬の子!』
 人々は、ぼくらをこう呼ぶ。
 『〈魔女〉の子! 淫売の子!』
 また別の人びとは、こんな言葉を叩きつけて来る。
 『バカ者! 与太者! 鼻糞小僧! 阿保! 豚っ子!・・・』」(P30)

 周囲の冷たい目にさらされながら、二人は力を合わせ、たくましく生きていきます。
 ぶたれたら、それに負けないよう体を鍛え、罵詈を浴びせられたら精神を鍛えます。

 乞食の話を聞いたら乞食の練習をし、盲や聾の話を聞いたら盲と聾の練習をします。
 断食の話を聞いたら断食し・・・過酷な状況を体験することで強くなっていきます。

 自分たちだけの小さな知恵と力で、人生を切り開いてゆく姿は、本当にすばらしい。
 これこそ「生きる力」です。この本で、我々が忘れかけているものに出会いました。

 母が迎えに来たとき、二人はすでに祖母との生活を快適に送っていて・・・
 父が助けを求めてきたとき、二人はある企みを実行して・・・

 さて、この作品の魅力を増しているものは、主人公の二人の悪童たちです。
 彼ら二人は、周囲とはかけ離れた、独特の不思議な世界を作っています。

 「あの二人は考えるのもいっしょ、行動するのもいっしょだ。二人で、まわりから
 隔たった、特殊な世界に生きている。彼らだけの世界だ。」(P34)

 曳かれていくユダヤ人たちの行列に、司祭の女中がしたことは・・・
 その光景を目に焼き付けた双子が、そのあとひそかにおこなったことは・・・

 彼ら二人には、何を考えているのか、何をするのか分からないところがあります。
 時々意表をつかれて、びっくりしました。特に、イミシンな結末には驚きました。

 「悪童日記」はたいへん評判になったため、続編ができて、全三巻となりました。
 終戦後を描いた「ふたりの証拠」と、完結編の「第三の嘘」です。


ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 文庫



第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(レザークラフト復活)

 以前やっていたレザークラフトは、仕事が忙しくなってから中断していました。
 ところがコロナによる業務縮小で、GWに時間ができたので、再開しています。

 5年も前に構想した、自分だけのシステム手帳に、ようやく取り掛かりました。
 じっくり時間をかけて何かに取り組むって、いいですね。心が癒されます。

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