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ルゴーネス幻想短編集 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「アラバスターの壺・女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集」
 ルゴーネス作 大西亮訳 (光文社古典新訳文庫)


 物理学、生物学、考古学など多岐にわたる知識を盛り込んで描いた、幻想小説集です。
 作者ルゴーネスは、ボルヘスやコルタサルへと続く、南米幻想文学の先駆者です。


アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集 (光文社古典新訳文庫)

アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: 文庫



 冒頭の「ヒキガエル」から、作者一流のおどろおどろしい世界に誘い込まれます。
 ある日「ぼく」が殺したヒキガエルを老いた女中に見せると、彼女は言いました。

 「焼き殺さないと生き返るってことも知らないのね?」
 そのあと女中が語った、ヒキガエルにまつわる恐ろしい話は・・・

 続く「カバラの実践」も、日常生活に、不可解なことが当然のように起こります。
 若き博物学者が、ガラスケースの中の女の骸骨に、戯れてこんなことを言いました。

 「愛すべきあなたという存在をよみがえらせるのです。」
 30分後、彼が眠りに落ちたあと、正面の椅子には若い女が座っていて・・・

 さて、この幻想小説集の全18編で、中心となるのが、タイトル作の二作でしょう。
 どちらも古代エジプトに関わり、古代文明ファンの私にはたまらない作品でした。

 「アラバスターの壺」は、カーナーヴォンの死とファラオの呪いを扱った物語です。
 カーナーヴォンは、ツタンカーメンの王墓発掘に、資金提供した実在の人物です。

 「いにしえの民は墓を守るために〈肉体を具えた霊〉を置いたのです。
 それは永遠に目覚めている復讐者です。」(P89)

 ツタンカーメンの部屋の外側には、アラバスター製の壺が二つ置かれていました。
 カーナーヴォンが、そのひとつの壺の栓を回すと、中から芳香と冷気が・・・

 「女王の瞳」は、「アラバスターの壺」の続編となっています。
 ツタンカーメンの王墓発掘で、命をとりとめたニールは、ある女と知り合い・・・

 なぜニールは死んだのか? シャイトという美貌の女は何者か?
 ハトシェプスト女王の鏡には何が映ったのか? 女王とシャイトの関係は?

 「いにしえの人々は、みずからが所有する品々のなかに、存在の根拠となる霊魂、
 すなわち〈分身〉が宿っていると考えていました。」(P128)・・・

 この二作と似た味わいがあるのが、シバの都にまつわる「ヌラルカマル」です。
 アルベルティ氏の指紋と、指輪に刻印された指紋が一致したのはなぜか?・・・

 私にとって、もっとも興味深かった物語は、「死んだ男」です。
 わずか6ページで、とても分かりやすく、少し笑えるお話です。

 ある村に、自分はすでに死んでいると思い込んでいる男がいて、「わたしは狂人な
 んかじゃありません。じつはもう三十年前から死んでいるのです。」と訴え・・・

 「円の発見」も面白かったです。チョークで描いた円から出ない狂人の話です。
 新任の医師は、彼が眠っている間に、チョークの円を消していったら・・・

 「ウィオラ・アケロンティア」は、毒を持つスミレを育てている庭師の物語です。
 「人間が発する〈ああ!〉という声は、じつは自然界の叫び声なのです」・・・

 ほか全18編、すべて短いながらも、たいへん印象的な作品ばかりでした。
 特にタイトル作となった二作は、絶対オススメです。

 さいごに。(体重計購入)

 コロナ太りという言葉があるそうです。最近、とても体が重くて重くて・・・
 5月の自粛期間に、競技場で練習できなくて、だいぶ体重が増えていました。

 例年この時期、65キロほどまで落ちているはずが、現在70キロ超ありました。
 さっそく、ネットで、タニタの体重計を購入しました。自分専用です。


タニタ 体重計 アナログ 大画面 ブラック HA-650 BK 見やすい大きな目盛版

タニタ 体重計 アナログ 大画面 ブラック HA-650 BK 見やすい大きな目盛版

  • 出版社/メーカー: タニタ(Tanita)
  • メディア: ホーム&キッチン



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