SSブログ

世界文学の流れをざっくりとつかむ23 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第六章≫ ルネサンス期から十七世紀の文学

 3 スペイン黄金期の文学

 フランスでルネサンス文化の花が開いた16世紀、隣のスペインでは黄金の世紀を迎えました。16世紀の前半、カルロス一世によってスペインは一大帝国を築き上げました。その原動力となったのは、アステカ、マヤ、インカの文明を次々と滅ぼし、略奪して得た富でした。1556年に国王となったフェリペ2世は絶対主義を推し進め、イベリア半島統一後も世界中で植民地を獲得し、スペインを太陽の沈まぬ国と言われるほどにまで拡大しました。その一方で、人々のモラルは低下し、治安は悪化しました。このような風潮のもと、社会の矛盾をあからさまに描いた作品が、次々と登場しました。

 1554年に「ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯」が出版されました。これは、最初のピカレスク小説です。最下層で育った少年ラサロが、さまざまな主人に仕えながら悪賢さを身に付けていく物語で、架空の話でありながら、もっともらしく描かれています。意地汚い聖職者が登場したり、免罪符売りの詐欺の手口が暴露されたりもしています。そのため、フェリペ二世によって禁書目録に加えられ、作者は名前を伏せることになりました。しかしスペインで大流行し、その後のピカレスク小説の発展に大きな影響を与えました。

 1605年に「ドン・キホーテ」を出版したミゲル・デ・セルバンテスは、スペインで最も有名な作家です。物語の主人公は、騎士物語を読みすぎて妄想に陥った、中年男ドン・キホーテです。従者サンチョパンサを従え旅に出て、数々の滑稽な事件を巻き起こします。風車を巨人だと思い込んで立ち向かったり、羊の大軍を軍隊だと思って突入したり、宿屋の女中を美しい姫様だと思い込んで話しかけたりと、その夢想はとどまることを知りません。多くの笑いをもたらす一方で、時として登場人物は神妙な言葉を吐き、読者は人間について、また人生について考えさせられます。そのため、「人生の書」とも呼ばれ、近代小説の祖とされています。その内容は普遍的な価値を持ち、今も世界中の人々によって読み継がれています。

 1626年に「ぺてん師ドン・パブロスの生涯」を出版したフランシスコ・デ・ケベードも、この時代を代表する作家です。この作品は、ピカレスク小説の最高傑作と言われています。語り手のパブロスは、卑しい生まれを隠しながら、なんとか貴族にのし上がろうとします。その手口は冷徹であくどく、彼の行動を通して、当時の社会の歪みを描き出しています。

 スペイン黄金期には、いくつかの有名な劇場が誕生し、演劇の人気が高まりました。特に、17世紀初頭に活躍したロペ・デ・ベガは、伝統的な作劇法にこだわらず、大衆の好みに合わせた新しい演劇の様式を掲げ、大衆演劇の発展に貢献しました。生涯に書いた800編ほどの戯曲のうち、「オルメードの騎士」などは、現代でも読み継がれている傑作です。ロペ・デ・ベガが始めた新しい演劇の様式は、17世紀後半に出たペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカへと受け継がれ、さらに磨きがかけられました。「人の世は夢」「サラメアの村長」など、現代でも読まれ続けています。

 次回は、イギリス・エリザベス朝文学について述べたいと思います。

 さいごに。(運動できなくて)

 5月まではコロナで、走ることができませんでした。今は忙しくて、走れません。
 職場の階段を、マスクをしたまま、1階から5階まで歩いたら、へとへとでした。

 体重は依然70キロ。運動していないのだから、当たり前か。
 それなら甘いものを食べるのを控えればいいのだけど・・・これが難しいのです。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ: