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黒い蜘蛛 [19世紀ドイツ北欧文学]

 「黒い蜘蛛」 ゴットヘルフ作 山崎章甫訳 (岩波文庫)


 領主の圧政で虐げられた人々が、悪魔と契約したことで起こる悲劇を描いています。
 民話をもとにしたホラーっぽい小説です。ゴットヘルフはスイスの国民的作家です。


黒い蜘蛛 (岩波文庫)

黒い蜘蛛 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1995/05/16
  • メディア: 文庫



 領主の無謀な命令に、村人たちが嘆いているところへ、緑の服を着た男が現れました。
 緑の男は、村人たちを助けると言います。しかも、報酬はほんのわずかでいいと。

 「さっきも言ったように、私の望みは大したことではない。
 まだ洗礼を受けておらん子供が欲しいだけなんだよ」(P57)

 そんなことを言うものは、もちろん、悪魔しかいません。
 悪魔は契約の証拠に、村の女クリスティーネに口づけすると、頬に小さなシミが・・・

 「頬の燃えるような痛みはますます激しくなり、黒いふくらみはさらに大きくなった。
 明らかに脚と分かるものがそこからのび出し、短い毛が生えてきた。背の部分にきら
 きらする点と線が現れ、そのふくらみは頭になった。」(P91)

 実に怖いです。これは、明らかにホラー小説でしょう。
 終盤、黒い蜘蛛を封じ込めるために、ある女はいったい何をしたのか?

 さて、この物語は、P137の3行目で終わってしまっても良かったと思います。
 続く物語は蛇足です。やたらと説教臭い、と思ったら、作者は牧師なのだそうです。

 もし後日譚を作るなら、初孫の洗礼の日の続きを書くべきでしょう。
 老人の話を信じなかった若者たちが、面白半分に柱の栓を抜くと、そこには・・・

 最後に、500年以上にわたって封印を解かれることを待ち望んだ蜘蛛が出てきたら!
 その蜘蛛が、雷鳴のような高笑いをするところで結末となったなら!

 作品に対する私の評価は、惜しいところで傑作になりそこねた佳作、というもの。
 物語を通して神の教えを広めようという、いやらしい下心が失敗の原因ではないか。

 さいごに。(24時間テレビ以外で見たかったQちゃん)

 24時間テレビのチャリティマラソンに、私の好きな、高橋尚子が登場しました。
 久々に見たQちゃんの走りは、昔とほとんど変わらず、感動しました。さすがです。

 ただ、24時間テレビの、感動の押し売り・寄付の押し付け的雰囲気には違和感あり。
 この番組にも、どこかいやらしい下心があるような気が・・・

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