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楡家の人びと2 [日本の現代文学]

 「楡家の人びと 第二部」 北杜夫 (新潮文庫)


 楡家の人びとが三代にわたって、明治・大正・昭和の激動期を生きてゆく物語です。
 作者の家族がモデルになっています。第二部の主人公は徹吉は、父の齋藤茂吉です。


楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/07/05
  • メディア: 文庫



 楡病院が火災で焼失し、基一郎が亡くなると、娘婿の徹吉が病院を引き継ぎました。
 先代が残したのは、灰燼に帰した青山と、松原に新病院を建設という無謀な計画。

 新院長徹吉に背負わされた責任はあまりにも大きく、基一郎の構想は途方もなく・・・
 とはいえ徹吉は、再建をはかるために動き出して・・・

 「すでに焼かれて骨と化した基一郎の遺志は、楡家の一族をあやつり、一筋に新病院
 建立への道を進ませたのである。」(P41)

 松原の新病院は、亡き基一郎の遺志を継ぐ勝俣秀吉によって、意外にも繁盛します。
 やがて、そちらが本院となり、徹吉の青山の病院が分院となってしまいました。

 そんな折、書物を読むことで心が慰められてゆく場面は、非常に共感できました。
 院長の自分が本なんか読んでいていいのかと思いながら、読まずにはいられない!

 「だが、心のうつろさからふと一冊の本を手にとり、そのある頁(ページ)をひら
 き、その幾行かを辿ってみたとき、徹吉は我知らずそこへ誘いこまれている自分を
 発見した。我に帰って彼は慄然とした。その言いようもなくなぐさめられた気持ち、
 その戸惑い、嫌悪と魅惑、」(P56)

 この徹吉が、北杜夫の父、斎藤茂吉をモデルにしていると思うと、非常に興味深い。
 妻の龍子は、徹吉との口論のあげく、3人の子供を残して家を出て行ってしまうし。

 その3人の子供のうち、長男の峻一は、精神科医で随筆家の齋藤茂太。
 そして次男の周二は、作者の北杜夫自身。実に興味深い小説です。

 「一体、歳月とは何なのか? そのなかで愚かに笑い、或いは悩み苦しみ、或いは
 惰性的に暮らしてゆく人間とは何なのか?」(P120)

 歳月とは何か? 人間とは何か?
 その答えを探すために、北杜夫はこの小説を書いたのでしょうか?

 第二部の終盤で大戦が始まり、一息ついた楡病院に、また苦難の時代が・・・
 最終の第三部では、どうなってしまうのでしょうか?

 さいごに。(体が重い)

 年末から色々と食べてばかりで、正月に入ってからは、毎日餅を食べています。
 久々に3キロジョッグしましたが、体が重くて重くて・・・

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