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楡家の人びと1 [日本の現代文学]

 「楡家の人びと 第一部」 北杜夫 (新潮文庫)


 楡家の人びとが三代にわたって、明治・大正・昭和の激動期を生きてゆく物語です。
 北杜夫自身の家族がモデルになっています。二度ほどTVドラマ化されました。


楡家の人びと 第一部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第一部 (新潮文庫)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/07/05
  • メディア: 文庫



 東京青山の楡病院は、非常に大きな精神病院で、まるで西洋御殿のようでした。
 大所帯のこの病院は、院長の楡基一郎が、わずか一代で築き上げたものでした。

 三部にわたるこの物語の第一部は、楡基一郎を中心に繰り広げられます。
 田舎の家を勝手に飛び出して、東京で医者として成功し、代議員にまでなった男!

 大正8年元旦、基一郎が宮中に参内するため、医師も患者たちも整列しました。
 車に乗ると、万歳の唱和すら起きました。あとから考えるとこれが全盛期でした。

 万歳の声に驚いた患者が、二階から飛び降り、たまたま車の上に落下しました。
 これが何かの前触れでもあったかのように、楡家は少しずつ坂を転がり始めます。

 翌年の総選挙では、想定外の落選・・・次女の聖子の、突然の婚約破棄・・・
 関東大震災を生き延びた病院が、思わぬ災難で・・・基一郎は突然・・・

 さて、作者の北杜夫は、ドイツのノーベル賞作家トーマス・マンを敬愛していました。
 この小説は、マンの名作「ブッデンブローク家の人々」の影響を受けて書かれました。

 「ブッデンブローク家の人々」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-11-18
               → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-11-21

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1969/09/16
  • メディア: 文庫



 本のカバーに描かれているのが、ブッデンブローク家の屋敷です。
 そしてこちらが、楡家の病院です。なんと、そっくりではありませんか!

楡家の人びと.jpg

 「ブッデンブローク家の人々」を読んだ2013年、この小説も読もうと思いました。 
 しかし当時は時間がなくて、ようやく6年後の今「楡家の人びと」を読んでいます。

 どちらも、一族の全盛期から始まり、少しずつ没落していくさまを描いています。
 そしてどちらも、一族のほとんどの人々が、没落する家と運命を共にしています。

 「長い生活、それは一人々々のいっときの事柄じゃなくて、家とか世間とかと共に
 一緒に進んでゆくものなのよ。」という龍子の言葉に、それが象徴されています。

 第一部の終わりで、楡病院の創立者であり支柱でもある基一郎が亡くなりました。
 このあとの楡家一族には、どんな運命が待っているのでしょうか?

 さいごに。(本に対する娘のこだわり)

 娘が、司馬遼太郎の「燃えよ剣」を読みたいと言いました。
 今年上映される映画で、山田涼介が沖田総司役で出るから、読んでおきたいと言う。

 しかし、新潮文庫の新しくなったカバーイラストが嫌だから、買いたくないのだと。
 私は本屋を2軒回って、旧カバー版を見つけて娘にプレゼントしたら喜ばれました。


燃えよ剣(上) (新潮文庫)

燃えよ剣(上) (新潮文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1972/06/01
  • メディア: 文庫



 このリンクの写真は、旧カバー。私がヨーカ堂の書店で見つけたものと同じ。
 新カバーは人物のイラストなのだけど、娘はお気に召さなかったようで・・・
 こういうヘンなこだわりは、私に似てしまったようです。

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