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読書のすすめ [読書・ライフスタイル]

 「読書のすすめ」 岩波文庫編集部編 (岩波文庫)


 小説家、詩人、哲学者、科学者、画家など、各界の第一人者による読書案内です。
 執筆陣は、安野光雅、大岡信、大江健三郎、中野孝次など、錚々たる顔ぶれです。


読書のすすめ (岩波文庫)

読書のすすめ (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/10/16
  • メディア: 文庫



 「書物は、人類が生み出したもっともすばらしいものである。そこにはもっとも高貴
 な人間精神が秘められ、すべての文化、学問、思想がもっとも純粋なかたちでそこに
 凝縮されている。書物は、私たちがおかれている小さな世界を超えて、遠い過去にさ
 かのぼり、広い世界に足をふみ入れることを可能にする。また人間の精神の奥深くま
 で入って、人類がこれまで蓄積してきた膨大な知識、思想、技術を私たちの前に提示
 する。」(P40・宇沢弘文の文章より)

 初めて読んだとき(30歳前後の頃)、この文章を何度も何度も読み返しました。
 まさに、本の魅力を簡潔に伝えた名文だと思いました。

 特に「書物は、私たちがおかれている小さな世界を超えて・・・」の一文が良いです。
 この文章は、鉛筆で傍線が引かれた上に、蛍光ペンで塗られていました!

 「人類は文字を発明することによって、それまで自分の脳で記憶し言葉で伝承する
 だけだった情報を、文字で記録して保存し、それを他人に伝達することを始めた。
 文字の発明は、体の外に第二の脳を作ることになったのだ。(中略)人間は自分の
 中で新しい情報を作り出す存在だが、同時に外部から、他人の脳が作り出した情報
 を取り込んで常に自己変革をしている存在でもある。だから、文字を書き、読むと
 いうのは、人間の基本的な生命活動なのである。」(P158・多田富雄の文章より)

 この文章もまた、鉛筆で傍線が引かれた上に、蛍光ペンで塗られていました。
 「書くこと」と「読むこと」の魅力を伝えてくれた名文だと思います。

 さて、多読術の話は、中村真一郎の「わが読書」という文の中で述べられています。
 成毛眞の「本は10冊同時に読め!」の元ネタ(?)が、ここにあります。

 まず、メモ帳に次のような項目を立てます。
「宗教、思想、詩、小説、エッセー、戯曲、語学、社会科学、数学」などです。

 毎週月曜日に、各項目それぞれに、日本の本と外国の本を書き込んでいきます。
 たとえば「小説」なら「偽紫田舎源氏」と「虚栄の市」と言う具合です。

 上の項目だと、9項目×2で18冊になります。これらを毎日並行して読むのです。
 そして翌週の月曜日に、読み終わった本はリストから外し、新たな本を加えます。

 そして、1930年代までに、人類の代表的な文化遺産はマスターするというのです。
 自分たちの時代が来たら、この蓄積をもとに出発しようと。さすが、志が高い。

 私も当時、真似しました。ただし五項目に絞り、日本と外国は分けませんでした。
 たとえば、「哲学、科学、日本の古典、日本文学、外国文学」といった具合です。

 実際当時の手帳には次のようなメモがありました。なかなか魅力的なリストです。
 「ユング心理学入門」「コスモス」「万葉集」「それから」「夏への扉」

 しかしすぐ諦めました。5冊同時に読むと、1冊10分ほどしかとれないからです。
 ちっとも本が読み終わらず、いつまでもリストの本が入れ替わらなかったのです。

 しかし、時間がある人にとっての読書法としては、とても面白いと思います。
 私は定年退職後に、この方法で読書したいと考えています。

 ほか、色川大吉の「敗戦前夜 『一日一冊』のころ」が興味深かったです。
 色川は18歳で東大に繰り上げ入学した直後、学徒出陣となり入隊が決まりました。

 戦争による死の気配が迫る中、一日一日の命を惜しむことに気が焦っていました。
 そのとき「一日一冊本を読もう」と決めて、古典をかたっぱしから読み始め・・・

 大岡信もまたこの本で、杉浦明平の「一日一冊読むルール」を紹介していました。
 そして杉浦明平は、岩波新書の「私の読書法」で独特の読書法を披露しています。

 それは、「毎月一万ページ」の読書の義務を自分に課す、というものでした。
 毎日300ページ超ということになります。もちろん、誰もそんな真似はできません。

 杉浦はまた、本を同時に四冊読む、ということをしていたと言います。
 うち二冊はあらかじめ決めた本で、二冊は自由選択(翻訳と日本文学)だそうです。

 岩波新書の「私の読書法」も、執筆陣は錚々たる顔ぶれです。
 清水幾太郎、梅棹忠夫、中村光夫、田中美知太郎、開高健、円地文子などなどです。


私の読書法 (岩波新書 青版 397)

私の読書法 (岩波新書 青版 397)

  • 作者: 大内 兵衛
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2022/05/18
  • メディア: 新書



 さいごに。(2時間待ちで入れず)

 先日の東京旅行で、スタバックス・リザーブ・ロースタリーに行きました。
 いつも混んでいるとは聞いていました。しかし、まさか2時間待ちとは!

 待っていたら、妻と娘との合流時間に間に合わなくなるので、諦めました。
 まあ、いいです。地元にあるスタバで我慢します。

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