若い藝術家の肖像2 [20世紀イギリス文学]
「若い藝術家の肖像」 ジェイムズ・ジョイス作 丸谷才一訳 (集英社文庫)
文学を志すようになる青年の成長過程を、多くの断章によって描いた自伝的作品です。
前半では宗教との決別と芸術への意欲が、後半では自身の美学論が書かれています。
芸術への道を進む決意をしたスティーヴンは、大学で多くの仲間と出会いました。
彼らと芸術について話すうちに、スティーヴン自身の芸術論も確立してきました。
自我も育ち、自分が信じないことに仕えたりはしない、と思うようになりました。
復活祭で聖体拝領するようにと言う母親と喧嘩して、友人に相談すると・・・
「この糞だめみたいに臭い世の中では、ほかのものはみんな不確かだけれど、母親
の愛情だけはそうじゃない。お母さんは君をこの世に連れて来た人だし、最初に自
分の体のなかに君をかかえてきたわけだ。」(P453)
妥協してお母さんを安心させろという、親友クランリーの意見にも納得しません。
周囲との間に隔たりを感じたスティーヴンは、この後どのような決意をするのか?
さて、終盤にかけての読みどころは、若者たちの芸術談話でしょう。
タイトルからして、作者の最も書きたかったことは、この場面にあると思います。
ところがこの場面は、若者特有の熱に駆られて、小難しい言葉を使っています。
だから内容を理解するのがたいへんなわりに、中身が薄いようにも感じました。
「いちばん単純な叙事的形式というのは、藝術家が叙事的事件の中心としての自分
を延長し、そういう自分について考えるときに、抒情文学から現れて来るものだ。
そしてこの形式が進展すると、とうとう、情緒の重力の中心が藝術家じしんからも
他人からも同距離の所にあるようになるんだよ。」(P400)
こういう議論は文学好きならばけっこう楽しいものです。
しかし、読者みなが楽しめ、味わうことができるものでしょうか?
ところで、清水義範「独断流『読書』必勝法」には、興味深い指摘がありました。
スティーヴンは理屈をこねているうちに、なんとなく藝術家を志した、とのこと。
なるほど。そう言われてみると、藝術を志すための大きなきっかけはありません。
そういう意味で、スティーヴンは軟弱というか、おこちゃまというか・・・
それを証明するように、「ユリシーズ」に登場する22歳のスティーヴンは・・・
そう考えると、彼らの芸術論もまた浅はかなものとして描かれているのか・・・
さあ、次はいよいよ「ユリシーズ」全四巻に挑戦です。
その第一巻からスティーヴンが登場すると言います。ちょっと楽しみです。
さいごに。(エンサイマーダ)
スペイン料理で有名なマヨルカは、日本では二子玉川ライズだけにあるようです。
菓子パンのエンサイマーダは、ザッハトルテと並んでおいしかったです。
表面はパリッとしていて、口に含むと溶けていくような独特の食感でした。
サングリアと一緒にひとつ食べました。あと3つくらい食べておきたかったです。
文学を志すようになる青年の成長過程を、多くの断章によって描いた自伝的作品です。
前半では宗教との決別と芸術への意欲が、後半では自身の美学論が書かれています。
芸術への道を進む決意をしたスティーヴンは、大学で多くの仲間と出会いました。
彼らと芸術について話すうちに、スティーヴン自身の芸術論も確立してきました。
自我も育ち、自分が信じないことに仕えたりはしない、と思うようになりました。
復活祭で聖体拝領するようにと言う母親と喧嘩して、友人に相談すると・・・
「この糞だめみたいに臭い世の中では、ほかのものはみんな不確かだけれど、母親
の愛情だけはそうじゃない。お母さんは君をこの世に連れて来た人だし、最初に自
分の体のなかに君をかかえてきたわけだ。」(P453)
妥協してお母さんを安心させろという、親友クランリーの意見にも納得しません。
周囲との間に隔たりを感じたスティーヴンは、この後どのような決意をするのか?
さて、終盤にかけての読みどころは、若者たちの芸術談話でしょう。
タイトルからして、作者の最も書きたかったことは、この場面にあると思います。
ところがこの場面は、若者特有の熱に駆られて、小難しい言葉を使っています。
だから内容を理解するのがたいへんなわりに、中身が薄いようにも感じました。
「いちばん単純な叙事的形式というのは、藝術家が叙事的事件の中心としての自分
を延長し、そういう自分について考えるときに、抒情文学から現れて来るものだ。
そしてこの形式が進展すると、とうとう、情緒の重力の中心が藝術家じしんからも
他人からも同距離の所にあるようになるんだよ。」(P400)
こういう議論は文学好きならばけっこう楽しいものです。
しかし、読者みなが楽しめ、味わうことができるものでしょうか?
ところで、清水義範「独断流『読書』必勝法」には、興味深い指摘がありました。
スティーヴンは理屈をこねているうちに、なんとなく藝術家を志した、とのこと。
なるほど。そう言われてみると、藝術を志すための大きなきっかけはありません。
そういう意味で、スティーヴンは軟弱というか、おこちゃまというか・・・
それを証明するように、「ユリシーズ」に登場する22歳のスティーヴンは・・・
そう考えると、彼らの芸術論もまた浅はかなものとして描かれているのか・・・
さあ、次はいよいよ「ユリシーズ」全四巻に挑戦です。
その第一巻からスティーヴンが登場すると言います。ちょっと楽しみです。
さいごに。(エンサイマーダ)
スペイン料理で有名なマヨルカは、日本では二子玉川ライズだけにあるようです。
菓子パンのエンサイマーダは、ザッハトルテと並んでおいしかったです。
表面はパリッとしていて、口に含むと溶けていくような独特の食感でした。
サングリアと一緒にひとつ食べました。あと3つくらい食べておきたかったです。