ユリシーズ3 [20世紀イギリス文学]
「ユリシーズⅡ」 ジェイムズ・ジョイス作 丸谷才一・永川玲二・高松雄一訳
(集英社文庫 ヘリテージシリーズ)
1904年6月16日のダブリンでの一日を、さまざまな文体を駆使して描いた小説です。
全四巻のうちの第二巻で、9~13挿話までが収録されています。
「ユリシーズ1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-05-28
「ユリシーズ2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-05-31
午後二時になりました。酒場を出たスティーヴンは、国立図書館にやって来ました。
そこで、名のある文学者たちを相手に、独創的な「ハムレット」論を披露しました。
午後三時。スティーヴンはある本屋で、たまたま知り合いに会って話をしました。
同じころ、ブルームは別の本屋にいて、色々な本をパラパラと見ていました。
午後五時。ブルームは酒場で、犬を連れた「市民」というあだ名の男に会いました。
ところが、ユダヤ人嫌いの「市民」から、ちょっとしたことで怒りを買って・・・
スティーヴンとブルームが、出会いそうで出会わないまま、やがて夜を迎えます。
相変わらず話に筋がなく、ダブリンでの光景と人々の心理を描写しているだけです。
と、今さらですが、ここで一つだけ気づいたことがあります。
主役はこの二人ではなく、都市ダブリンそのものなのではないか、ということです。
そういえばジョイスは、「たとえダブリンが滅んでも、『ユリシーズ』があれば再現
できる」と語ったというではありませんか。主役は1904年6月16日のダブリンですよ。
ところで、読書仲間が以前言いました。「二巻目に入る頃、文体に慣れてくるよ」と。
ところが、依然としてまったく慣れません。内容がまるで分からない箇所もあります。
私は、高校時代の数学の授業を思い出しました。
理解できないまま、ひたすら先生の話を聞いていたあのころを。これは修行ですよ。
「プルルプルル。
きっとバーガのせい。
フフフ! ウー。ルルプル。
≪世界の国々のあいだに≫。後ろには誰もいない。あの女は通り過ぎた。≪そのとき、
そのときまで≫。電車。クラン、クラン、クラン。絶好のチャ、やって来る。クランド
ルクランクラン。きっとあのバーガンディの。そうだよ。一、二。≪わたしの墓碑銘は
≫。クラーアアアア。≪書かれぬままであれ。わがこと≫。
ププルルプフフルルププフフフフ。
≪終れり≫。」(P278)
これでは理解できません。ブルームのおちゃめなところの分かる貴重な場面なのに。
この場面を味わうには、頭の中でさらに意訳しなければなりません。
「ああ、屁が出ちゃう。さっき飲んだ炭酸のせいか。ああ、屁が出ちゃう。
大丈夫、後ろには誰もいない。歌も聞こえる、音楽も鳴ってる。電車の音もする。
よし、屁を出しちゃえ。どさくさに紛れて屁を出しちゃえ。
ピアノも盛り上がってきたぞ。音に合わせて、いち、にの、さん。
ブハーブハーブー!
ああ、すっきり。」
ところで、第二巻における最大の読みどころは、12章「キュクロプス」でしょう。
語り手「おれ」は、姓名不詳の「取り立て屋」で、誰なのか謎とされていました。
その謎を解いた(?)のが、柳瀬尚紀です。なんと、「おれ」は〇〇だと言います。
詳細は、1996年刊の「ジェイムズ・ジョイスの謎を解く」で、説明されています。
私はこの本を読んでいませんが、例の読書仲間からだいたいの内容を聞いています。
「すごい!」と「アホか?」のギリギリのところにあるように感じました。
ちなみにジョイス自身、「この作品には非常に多くの謎を詰め込んだので、人々は何
世紀にもわたって議論するだろう」みたいなことを、生前語っていたようです。
私はここに、大いに違和感を覚えてしまいます。
「ユリシーズ」は、小説以外の何かになってしまっているのではないでしょうか。
さらに言うと、文学作品というよりも、「なぞなぞ」に近いのではないでしょうか。
文学史よりもギネスに残るのではないでしょうか。世界一壮大な「なぞなぞ」として。
さいごに。(言語文化だけは・・・)
娘の高校の最初の定期テストが返されました。なんと言語文化だけはクラスで1番。
言語文化というのは、文学作品中心の国語科目です。私としては、少し嬉しいです。
一緒に古文の予習をしたり、古典文法を暗記したりして、良かったと思います。
娘も、言語文化を唯一の得意科目にしようという目標ができました。応援したいです。
(集英社文庫 ヘリテージシリーズ)
1904年6月16日のダブリンでの一日を、さまざまな文体を駆使して描いた小説です。
全四巻のうちの第二巻で、9~13挿話までが収録されています。
「ユリシーズ1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-05-28
「ユリシーズ2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-05-31
午後二時になりました。酒場を出たスティーヴンは、国立図書館にやって来ました。
そこで、名のある文学者たちを相手に、独創的な「ハムレット」論を披露しました。
午後三時。スティーヴンはある本屋で、たまたま知り合いに会って話をしました。
同じころ、ブルームは別の本屋にいて、色々な本をパラパラと見ていました。
午後五時。ブルームは酒場で、犬を連れた「市民」というあだ名の男に会いました。
ところが、ユダヤ人嫌いの「市民」から、ちょっとしたことで怒りを買って・・・
スティーヴンとブルームが、出会いそうで出会わないまま、やがて夜を迎えます。
相変わらず話に筋がなく、ダブリンでの光景と人々の心理を描写しているだけです。
と、今さらですが、ここで一つだけ気づいたことがあります。
主役はこの二人ではなく、都市ダブリンそのものなのではないか、ということです。
そういえばジョイスは、「たとえダブリンが滅んでも、『ユリシーズ』があれば再現
できる」と語ったというではありませんか。主役は1904年6月16日のダブリンですよ。
ところで、読書仲間が以前言いました。「二巻目に入る頃、文体に慣れてくるよ」と。
ところが、依然としてまったく慣れません。内容がまるで分からない箇所もあります。
私は、高校時代の数学の授業を思い出しました。
理解できないまま、ひたすら先生の話を聞いていたあのころを。これは修行ですよ。
「プルルプルル。
きっとバーガのせい。
フフフ! ウー。ルルプル。
≪世界の国々のあいだに≫。後ろには誰もいない。あの女は通り過ぎた。≪そのとき、
そのときまで≫。電車。クラン、クラン、クラン。絶好のチャ、やって来る。クランド
ルクランクラン。きっとあのバーガンディの。そうだよ。一、二。≪わたしの墓碑銘は
≫。クラーアアアア。≪書かれぬままであれ。わがこと≫。
ププルルプフフルルププフフフフ。
≪終れり≫。」(P278)
これでは理解できません。ブルームのおちゃめなところの分かる貴重な場面なのに。
この場面を味わうには、頭の中でさらに意訳しなければなりません。
「ああ、屁が出ちゃう。さっき飲んだ炭酸のせいか。ああ、屁が出ちゃう。
大丈夫、後ろには誰もいない。歌も聞こえる、音楽も鳴ってる。電車の音もする。
よし、屁を出しちゃえ。どさくさに紛れて屁を出しちゃえ。
ピアノも盛り上がってきたぞ。音に合わせて、いち、にの、さん。
ブハーブハーブー!
ああ、すっきり。」
ところで、第二巻における最大の読みどころは、12章「キュクロプス」でしょう。
語り手「おれ」は、姓名不詳の「取り立て屋」で、誰なのか謎とされていました。
その謎を解いた(?)のが、柳瀬尚紀です。なんと、「おれ」は〇〇だと言います。
詳細は、1996年刊の「ジェイムズ・ジョイスの謎を解く」で、説明されています。
私はこの本を読んでいませんが、例の読書仲間からだいたいの内容を聞いています。
「すごい!」と「アホか?」のギリギリのところにあるように感じました。
ちなみにジョイス自身、「この作品には非常に多くの謎を詰め込んだので、人々は何
世紀にもわたって議論するだろう」みたいなことを、生前語っていたようです。
私はここに、大いに違和感を覚えてしまいます。
「ユリシーズ」は、小説以外の何かになってしまっているのではないでしょうか。
さらに言うと、文学作品というよりも、「なぞなぞ」に近いのではないでしょうか。
文学史よりもギネスに残るのではないでしょうか。世界一壮大な「なぞなぞ」として。
さいごに。(言語文化だけは・・・)
娘の高校の最初の定期テストが返されました。なんと言語文化だけはクラスで1番。
言語文化というのは、文学作品中心の国語科目です。私としては、少し嬉しいです。
一緒に古文の予習をしたり、古典文法を暗記したりして、良かったと思います。
娘も、言語文化を唯一の得意科目にしようという目標ができました。応援したいです。