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賢者の石2(コリン・ウィルソン) [20世紀イギリス文学]

 「賢者の石」 コリン・ウィルソン作 中村保男訳 (創元推理文庫)


 意識を無限に拡大する能力を得た青年が、人類進化の謎の解明に挑むSF小説です。
 1971年刊。第Ⅰ部「絶対の探求」、第Ⅱ部「夜の涯への旅」の二部構成です。


賢者の石 (創元推理文庫 641-1)

賢者の石 (創元推理文庫 641-1)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1971/06/01
  • メディア: 文庫



 「私」は、前頭前部皮質に手術を施してから、意識が拡大するのを感じました。
 さらに、過去に遡ってものごとを把握する「時間ビジョン」が可能になりました。

 リトルウェイも手術を施し、その後、ふたりでストーン・ヘンジを訪れました。
 パンフレットを読む「私」の心に、悪の気配とともに、ある光景が浮かびました。

 それは、身の丈三メートルを越す、猿に似た巨人が平らな石を引きずっている様子。
 調べてみると、中国やジャワで、巨人の化石が見つかっていることが分かりました。

 リトルウェイの弟が、何年か前にトルコから、玄武岩の小像を持ち帰っていました。
 「私」はそれに触れて悪の匂いを感じ、それが50万年前のものだと直感しました。

 「私」の、ものごとを把握する能力(内視力)は、どんどん発達していました。
 あるとき突如、故意に正体を隠している何者かの存在を、はっきりと感じました。

 「私」が玄武岩の小像の起源を探ろうとすると、急に透視力が妨害されたのです。
 何者かが、自分たちの調査を、目に見えない仕方で妨げようとしているようで・・・

 と、「ムー民」的には心躍る展開です。また、第Ⅱ部からテンポがよくなりました。
 さらに、謎が謎を呼び、様々な謎がつながっていきます。

 マヤ文明衰退の謎と、その背後にあった「大いなる秘密」・・・
 シルベリーの埋葬塚の奥深くで眠り、人類の詮索を嫌がる謎の存在・・・

 とうとう「私」とリトルウェイは、ある結論に達しました。
 人間が出現するはるか昔に、地球上には知性を持った生物が存在したのではないか?

 その生物とは何か? それは今どこにいるのか? それが調査を妨害しているのか?
 その謎を解くヒントは、怪奇作家ラヴクラフトの書いた「古き種族」の伝説に・・・

 「ラヴクラフトによれば、『古きものども』がかつて遥かな星より来たり、一時、地
 球を支配して、巨石をもって巨大な都市を築いたが、黒い魔術を使いすぎて自滅し、
 現在は地下に”眠って”いるという。」(P312)

 この展開に、私はたまげました。なんと、ラヴクラフトが出てくるとは!
 私は知りませんでした。この作品もまた、クトゥルー神話のひとつだったとは!

 本書「序文」から、ウィルソンがクトゥルー神話を書くに至った経緯が分かります。
 ダーレス氏に「ラヴクラフトばりの作品を書いてみろ」と言われたからなのだ、と。

 終盤に入ると、クトゥルー神話でおなじみの「ネクロノミコン」も登場します。
 狂ったアラビア人アブドル・アルハズラットが著したとされる、架空の魔道書です。

 また、「古きものども」はアーサー・マッケンからの借用だとも書いてありました。
 マッケンには、「地下に生きる不思議な人々」についての物語があるのだそうです。

 アーサー・マッケンの代表作は、ぜひこの次に読んでみたいと思っています。
 特に、クトゥルー神話に影響を与えた「パンの大神」は、絶対に読みたいです。

 さて、本書「賢者の石」は、ラストに近づくと、どんどんテンションが上がります。
 いったいどんな結末が待っているのか? とても楽しみです。

 さいごに。(300mハードル)

 300mハードルという種目に出場しました。
 47秒もかかってしまいました。(45秒くらいで走りたかった)

 ハードルの高さは400mHと同じですが、久々だったので、とても高く感じました。
 走り終わったあと、股関節が痛くて痛くて・・・

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